【電力】平成29 問1|重力ダム・アーチダム・ロックフィルダムなどの特徴理解を問う水力発電論説問題
水力発電所に用いられるダムの種別と特徴に関する記述として,誤っているものを次の (1)~(5) のうちから一つ選べ。
(1) 重力ダムとは,コンクリートの重力によって水圧などの外力に耐えられるようにしたダムであって,体積が大きくなるが構造が簡単で安定性が良い。我が国では,最も多く用いられている。
(2) アーチダムとは,水圧などの外力を両岸の岩盤で支えるようにアーチ型にしたダムであって,両岸の幅が狭く,岩盤が丈夫なところに作られ,コンクリートの量を節減できる。
(3) ロックフィルダムとは,岩石を積み上げて作るダムであって,内側には,砂利,アスファルト,粘土などが用いられている。ダムは大きくなるが,資材の運搬が困難で建設地付近に岩石や砂利が多い場所に適している。
(4) アースダムとは,土壌を主材料としたダムであって,灌漑(かんがい)用の池などを作るのに適している。基礎の地質が,岩などで強固な場合のみ採用される。
(5) 取水ダムとは,水路式発電所の水路に水を導入するため河川に設けられるダムであって,ダムの高さは低く,越流形コンクリートダムなどが用いられている。
合格への方程式
ダムの基本分類
水力発電に使用されるダムは、主に構造や材料によって分類されます。第三種電気主任技術者試験では、ダムの種類と特徴についての基本的な知識が問われます。
重要ポイント:ダムは大きく「コンクリートダム」と「フィルダム」の2種類に分類できます。コンクリートダムには重力ダムとアーチダムがあり、フィルダムにはロックフィルダムとアースダムがあります。
ダムの主な分類:
- コンクリートダム
- 重力ダム:コンクリートの重さで水圧に耐える
- アーチダム:アーチ構造で両岸に力を分散
- フィルダム
- ロックフィルダム:岩石を主材料とする
- アースダム:土壌を主材料とする
- その他
- 取水ダム:水路式発電所で使用される低いダム
間違いやすいポイント:アースダムは地質が「強固な場合のみ」採用されるわけではなく、むしろ地質があまり強固でない場所にも適しています。小規模なダムに適しており、灌漑用の池などに多く用いられます。
わかりやすい基本説明:
- ダムは水を貯める壁のようなもので、その形や材料によって種類が分かれます。
- コンクリート製のものは硬くて丈夫ですが、場所によっては土や石を積み上げた方が作りやすい場合もあります。
- どのタイプのダムを選ぶかは、地形や地質、必要な高さ、建設材料の入手のしやすさなどによって決まります。
- 水力発電では、水の位置エネルギーを利用するため、ダムの高さや貯水量が発電量に影響します。
ダムの構造と特徴
各種ダムには、それぞれ特徴的な構造があり、適する場所や条件が異なります。試験では各ダムの特徴の理解が求められます。
各ダムの構造と特徴:
各ダムの構造と特徴:
重力ダム
主な材料:コンクリート
特徴:コンクリートの重さで水圧に耐える。三角形の断面形状が特徴。安定性が良い。日本で最も多く使用されている。
適している条件:広い川幅、強固な岩盤
アーチダム
主な材料:コンクリート
特徴:湾曲した形状で両岸に力を分散。コンクリート量が少なくて済む。高い技術力が必要。
適している条件:狭い渓谷、両岸が強固な岩盤
ロックフィルダム
主な材料:岩石、砂利、粘土等
特徴:岩石を積み上げる。内部に不透水層を設ける。大きな体積が必要。
適している条件:現地に岩石が豊富、資材運搬が困難な場所、地質が多少弱くても可
アースダム
主な材料:土壌
特徴:土を主材料とする。比較的小規模。建設コストが低い。
適している条件:小規模な灌漑用途、軟弱な地盤でも対応可、高さがあまり必要ない場所
取水ダム
主な材料:コンクリート等
特徴:水路式発電所の水路に水を導入。高さが低い。越流形が多い。
適している条件:水路式発電所、河川から水を引く必要がある場所
間違いやすいポイント:ロックフィルダムとアースダムは似ていますが、主材料が異なります。ロックフィルダムは岩石が主材料であるのに対し、アースダムは土壌が主材料です。また、アースダムは必ずしも強固な地質の場所だけに建設されるわけではありません。
わかりやすい基本説明:
- 重力ダムは「力士がどっしり構えて水の押す力に耐える」ようなダムです。
- アーチダムは「弓のように力を分散させる」構造で、材料を節約できます。
- ロックフィルダムは「石を積み上げた山」のようなダムで、現地の材料を活用できます。
- アースダムは「土を盛った丘」のようなダムで、小さな池などに適しています。
- 取水ダムは「水路に水を引き込むための小さな堰」のようなものです。
水力発電とダムの関係
水力発電所では、ダムの種類によって発電方式や設備構成が異なります。試験では水力発電の基本的な知識とダムの関係についても問われます。
水力発電の主な方式:
- ダム式発電:ダムで水をせき止め、位置エネルギーを利用
- 水路式発電:河川から取水して水路で落差を得る
- ダム水路式発電:ダムと水路を組み合わせた方式
各発電方式とダムの関係:
- ダム式発電所
- 大型の貯水ダム(重力ダムやアーチダム)を使用
- 発電所はダムの直下や近傍に設置
- 水量調整が容易で安定した発電が可能
- 大規模な発電所に適している
- 水路式発電所
- 取水ダム(低いダム)を使用
- 水路で高低差を利用して発電
- 河川の自然流量に依存するため、水量変動の影響を受けやすい
- 小~中規模の発電所に適している
- ダム水路式発電所
- 貯水ダムと長い水路を組み合わせる
- ダムでの貯水と水路での落差の両方を活用
- 水量調整と大きな落差の両方の利点を得られる
- 地形条件に適合する場合に採用
間違いやすいポイント:取水ダムは水路式発電所で使用される低いダムで、水を貯めるというより河川から水を引き込む役割が主です。貯水能力はあまりないため、発電量は河川の流量に大きく依存します。
ダム選定の要素:
- 地形条件:渓谷の形状、川幅、地質など
- 経済性:建設コスト、材料調達の容易さ
- 技術的要素:必要な高さ、水圧、建設技術
- 環境への影響:貯水池の範囲、周辺環境への配慮
わかりやすい基本説明:
- 水力発電は「高いところから落ちる水の力」で電気を作る仕組みです。
- ダムは水をせき止めて「水の位置エネルギー」を蓄えます。
- ダム式発電は「水をためておいて必要なときに使う」方式です。
- 水路式発電は「川の水を横から引いて落差を作る」方式です。
- ダムの種類や大きさは、地形や必要な発電量によって選ばれます。
🔍 ワンポイントアドバイス: 第三種電気主任技術者試験では、水力発電のダムに関する問題は、各ダムの特徴と適した条件を問うものがよく出題されます。特にアースダムは「地質が強固な場合のみ採用される」という誤った記述に注意しましょう。実際には、アースダムは比較的小規模で、必ずしも強固な地盤でなくても建設できるという特徴があります。試験では「誤っているものを選べ」という出題形式も多いので、各ダムの特徴を正確に理解しておくことが重要です。また、「~のみ」「必ず~」などの極端な表現がある選択肢は誤りであることが多いので、注意深く読むようにしましょう。
電力 ダムの種別と特徴
ダムは種類によって特性が違うから、どんな地形や目的に合わせてどのタイプを選ぶかが重要なんや。
一つずつ見ていこか。
日本ではどれくらい一般的なんやろ?
特徴としては、構造がシンプルで安定性が高いのですが、コンクリートの量が多くなるため体積が大きくなります。
日本では最も一般的に使用されているタイプのダムです。
選択肢(1)の記述は正しいと考えます。
解説
正解は (4) です。
各選択肢の詳しい解説:
- (1) 正しい:重力ダムはコンクリートの自重(重力)によって水圧に耐える構造です。体積は大きくなりますが、設計・施工が比較的容易で安定性が高いため、条件が合えば最も採用されやすく、日本で最も多く使用されているタイプです。
- (2) 正しい:アーチダムはアーチ構造を利用して水圧を両岸の岩盤に分散させる設計です。峡谷など両岸が狭く岩盤が丈夫な場所に適しており、コンクリート量を節減できるメリットがあります。
- (3) 正しい:ロックフィルダムは岩石を積み上げて作り、内側には水を通さないよう砂利、アスファルト、粘土などを使用します。資材運搬が困難な場所や、建設地付近に材料が豊富にある場所に適しています。
- (4) 誤り:アースダムは土壌を主材料とするダムで、小規模な灌漑用の池などに適していますが、「基礎の地質が、岩などで強固な場合のみ採用される」というのは誤りです。むしろアースダムは軟弱な地盤でも対応可能で、地質が強固でない場合にも採用されます。
- (5) 正しい:取水ダムは水路式発電所の水路に水を導入するための低いダムで、越流形コンクリートダムなどが使用されます。貯水ではなく導水が主目的です。
ダムの種類や特徴を理解することは、水力発電設備の基礎知識として重要です。特に地形条件や目的に応じて最適なダム形式を選定する際の判断基準を押さえておくことが大切です。
この問題のポイント
- 重力ダム:コンクリートの重力で水圧に耐える、日本で最も一般的
- アーチダム:アーチ構造で両岸に力を分散、コンクリート節減可能
- ロックフィルダム:岩石を積上げ、現地材料の活用に適する
- アースダム:土壌が主材料、軟弱地盤でも対応可能(強固な地盤「のみ」は誤り)
- 取水ダム:水路に水を導くための低いダム