【理論】令和6年 (下期) 問9|RC直列回路における周波数による電流値の変化を求める計算問題

\( 4 \) [\( \Omega \)] の抵抗と、静電容量が \( C \) [F] のコンデンサを直列に接続した \( RC \) 回路がある。

この \( RC \) 回路に、周波数 \( 50 \) [Hz] の交流電圧 \( 100 \) [V] の電源を接続したところ、\( 20 \) [A] の電流が流れた。

では、この \( RC \) 回路に、周波数 \( 60 \) [Hz] の交流電圧 \( 100 \) [V] の電源を接続したとき、\( RC \) 回路に流れる電流の値 [A] として、最も近いものを次の (1) ~ (5) のうちから一つ選べ。

合格への方程式

問題と基本概念

この問題のポイント

重要なポイント

  • 周波数が変わると、コンデンサのリアクタンスが変化する
  • コンデンサのリアクタンスは周波数に反比例する
  • 回路全体のインピーダンスが変わり、電流値も変化する
  • 抵抗値は周波数によって変わらない

RC回路とは

RC回路は抵抗(Resistor)とコンデンサ(Capacitor)を組み合わせた回路です。交流回路では、これらの素子は異なる特性を示します:

  • 抵抗:周波数に関係なく一定の抵抗値
  • コンデンサ:周波数が高いほど電流を通しやすくなる

身近な例で考えてみよう

コンデンサは「電気の貯金箱」のようなものです。高い周波数(早い変化)では貯金箱のフタの開け閉めが追いつかず、電気が素通りしやすくなります。一方、低い周波数(ゆっくりの変化)では、しっかりと電気を蓄えようとするので、電流が流れにくくなります。

問題解決のアプローチ

この問題は以下の手順で解きます:

  1. 50Hz時の条件から:回路全体のインピーダンスを求める
  2. コンデンサのリアクタンス:50Hz時の値を計算する
  3. 60Hz時の変化:周波数比からリアクタンスの変化を求める
  4. 新しい電流値:変化後のインピーダンスから電流を計算する

よくある間違い

  • コンデンサのリアクタンスと周波数の関係を逆に覚える
  • 直列回路と並列回路のインピーダンス計算を混同する
  • 実効値と最大値を間違える
  • 計算途中で小数点以下を雑に扱う

交流回路の基本的な考え方

直流回路では オームの法則:\( V = IR \) を使いますが、交流回路では:

\[ V = IZ \]

ここで \( Z \) はインピーダンスと呼ばれ、交流に対する「総合的な抵抗」を表します。

インピーダンスの特徴

  • 大きさだけでなく、位相(タイミング)の情報も含む
  • 抵抗成分とリアクタンス成分を合成したもの
  • 周波数によって値が変わる

インピーダンスとリアクタンスの基礎

各素子のインピーダンス

抵抗 \( R \, \mathrm{[\Omega]} \),コイル \( L \, \mathrm{[H]} \),コンデンサ \( C \, \mathrm{[F]} \) があり,電源の角周波数 \( \omega \, \mathrm{[rad/s]} \) 及び周波数 \( f \, \mathrm{[Hz]} \) が与えられているとき,それぞれのインピーダンス \( \mathrm{[\Omega]} \) は:

\[ \begin{aligned} \dot{Z}_R &= R \\[10pt] \dot{Z}_L &= j\omega L = j2\pi f L \\[10pt] \dot{Z}_C &= \frac{1}{j\omega C} = \frac{1}{j2\pi f C} \end{aligned} \]

重要な関係式

  • 角周波数:\( \omega = 2\pi f \)
  • コンデンサのリアクタンス:\( X_C = \frac{1}{2\pi f C} \)
  • コイルのリアクタンス:\( X_L = 2\pi f L \)

周波数とリアクタンスの関係

素子 リアクタンス 周波数依存性 特徴
抵抗 R 0(純抵抗) 変化しない 常に一定
コイル L \( X_L = 2\pi f L \) 周波数に比例 高周波で大きくなる
コンデンサ C \( X_C = \frac{1}{2\pi f C} \) 周波数に反比例 高周波で小さくなる

コンデンサの周波数特性

コンデンサのリアクタンス \( X_C \) は周波数 \( f \) に反比例します:

\[ X_C = \frac{1}{2\pi f C} \]

周波数が変わった時のリアクタンス

周波数が \( f_1 \) から \( f_2 \) に変わった場合:

\[ \frac{X_{C2}}{X_{C1}} = \frac{f_1}{f_2} \]

つまり、周波数の比の逆数がリアクタンスの比になります。

インピーダンスの合成

RC直列回路では、抵抗とコンデンサのインピーダンスを合成します:

\[ \dot{Z} = R + \frac{1}{j2\pi f C} = R - j\frac{1}{2\pi f C} \]

インピーダンスの大きさは:

\[ |Z| = \sqrt{R^2 + X_C^2} = \sqrt{R^2 + \left(\frac{1}{2\pi f C}\right)^2} \]

複素数表示の理解

  • 実部(R):抵抗成分、電力を消費する
  • 虚部(X):リアクタンス成分、エネルギーを蓄積・放出する
  • コンデンサ:虚部が負(-j)、電圧より電流が進む
  • コイル:虚部が正(+j)、電圧より電流が遅れる

位相関係

RC回路では、電圧と電流に位相差が生じます:

\[ \phi = \arctan\left(-\frac{X_C}{R}\right) = -\arctan\left(\frac{X_C}{R}\right) \]

位相の特徴

  • RC回路:電流が電圧より進む(進み位相)
  • RL回路:電流が電圧より遅れる(遅れ位相)
  • R成分が大きい:位相差が小さくなる
  • X成分が大きい:位相差が大きくなる

アドミタンスとの関係

アドミタンス \( Y \, \mathrm{[S]} \) はインピーダンスの逆数です:

\[ \begin{aligned} \dot{Y}_R &= \frac{1}{R} \\[10pt] \dot{Y}_L &= \frac{1}{j\omega L} = \frac{1}{j2\pi f L} \\[10pt] \dot{Y}_C &= j\omega C = j2\pi f C \end{aligned} \]

並列回路ではアドミタンスを足し算で計算するので便利です。

実際の数値例

50Hzで \( C = 10 \, \mu F \) のコンデンサのリアクタンス:

\[ X_C = \frac{1}{2\pi \times 50 \times 10 \times 10^{-6}} \approx 318.3 \, \Omega \]

60Hzでは:

\[ X_C = \frac{50}{60} \times 318.3 \approx 265.3 \, \Omega \]

実際の解き方・計算手順

与えられた条件の整理

問題の条件

  • 抵抗:\( R = 4 \, \Omega \)
  • コンデンサ:\( C \, \mathrm{[F]} \)(値は未知)
  • 50Hz時:電圧 100V、電流 20A
  • 60Hz時:電圧 100V、電流は?

ステップ1:50Hz時の回路全体のインピーダンスを求める

オームの法則から:

\[ Z = \frac{E}{I} = \frac{100}{20} = 5 \, \Omega \]

インピーダンスの物理的意味

インピーダンス 5Ω とは、この RC回路が 100V の交流電圧に対して 20A の電流を流す「総合的な抵抗」を表します。

ステップ2:50Hz時のコンデンサのリアクタンスを求める

RC直列回路では、インピーダンスの大きさは:

\[ |Z| = \sqrt{R^2 + X_C^2} \]

これを \( X_C \) について解くと:

\[ X_C = \sqrt{Z^2 - R^2} = \sqrt{5^2 - 4^2} = \sqrt{25 - 16} = \sqrt{9} = 3 \, \Omega \]

計算の確認

求めた値で検算してみます:

\[ |Z| = \sqrt{4^2 + 3^2} = \sqrt{16 + 9} = \sqrt{25} = 5 \, \Omega \quad \checkmark \]

ステップ3:60Hz時のコンデンサのリアクタンスを求める

コンデンサのリアクタンスは周波数に反比例するので:

\[ X_C' = \frac{f}{f'} \times X_C = \frac{50}{60} \times 3 = \frac{5}{6} \times 3 = 2.5 \, \Omega \]

周波数とリアクタンスの関係

周波数が \( \frac{60}{50} = 1.2 \) 倍になると、リアクタンスは \( \frac{50}{60} = \frac{5}{6} \) 倍(約0.833倍)になります。

ステップ4:60Hz時の回路全体のインピーダンスを求める

抵抗は変わらないので:

\[ Z' = \sqrt{R^2 + (X_C')^2} = \sqrt{4^2 + 2.5^2} = \sqrt{16 + 6.25} = \sqrt{22.25} \]

具体的な計算

\[ Z' = \sqrt{22.25} \approx 4.717 \, \Omega \]

電卓で確認:\( \sqrt{22.25} = 4.71699... \approx 4.717 \)

ステップ5:60Hz時の電流を求める

オームの法則から:

\[ I' = \frac{E}{Z'} = \frac{100}{4.717} \approx 21.2 \, \mathrm{A} \]

答えの確認

結果のまとめ

  • 50Hz時:インピーダンス 5Ω、電流 20A
  • 60Hz時:インピーダンス 4.717Ω、電流 21.2A
  • 変化の傾向:周波数が上がると、電流が増加

結果の物理的解釈

周波数が高くなると、コンデンサのリアクタンスが小さくなり、回路全体のインピーダンスが下がります。その結果、同じ電圧でもより多くの電流が流れるようになります。

別解:比例計算による方法

より直接的な方法として、インピーダンスの比から電流の比を求めることもできます:

\[ \frac{I'}{I} = \frac{Z}{Z'} = \frac{5}{4.717} \approx 1.06 \]

したがって:

\[ I' = 20 \times 1.06 = 21.2 \, \mathrm{A} \]

答え:(3) \( 21.2 \)

周波数特性と応用

RC回路の周波数特性

RC回路は周波数によって大きく特性が変わります。これを周波数特性と呼びます。

周波数による変化のまとめ

  • 低周波数:コンデンサのリアクタンスが大きく、電流が流れにくい
  • 高周波数:コンデンサのリアクタンスが小さく、電流が流れやすい
  • 極端に高い周波数:コンデンサが短絡状態に近づく
  • 極端に低い周波数:コンデンサが開放状態に近づく

実際の応用例

応用分野 回路の役割 重要な特性
ハイパスフィルタ 高周波成分を通す カットオフ周波数以上を通過
結合回路 交流成分のみ伝送 直流成分をカット
微分回路 入力波形の微分 急峻な変化を強調
タイマー回路 時定数による遅延 充放電特性を利用
発振回路 特定周波数で発振 位相条件と利得条件

カットオフ周波数

RC回路にはカットオフ周波数という重要な特性があります。これは、出力が入力の \( \frac{1}{\sqrt{2}} \)(約70.7%)になる周波数です。

\[ f_c = \frac{1}{2\pi RC} \]

カットオフ周波数の計算

今回の問題で、\( R = 4 \, \Omega \)、50Hzで \( X_C = 3 \, \Omega \) なので:

\[ \frac{1}{2\pi f C} = 3 \quad \Rightarrow \quad C = \frac{1}{2\pi \times 50 \times 3} \approx 1.06 \, \mathrm{mF} \] \[ f_c = \frac{1}{2\pi \times 4 \times 1.06 \times 10^{-3}} \approx 37.6 \, \mathrm{Hz} \]

位相特性

RC回路では、周波数によって電圧と電流の位相関係も変わります:

\[ \phi = -\arctan\left(\frac{X_C}{R}\right) \]

位相角の計算

  • 50Hz時:\( \phi = -\arctan\left(\frac{3}{4}\right) \approx -36.9° \)
  • 60Hz時:\( \phi = -\arctan\left(\frac{2.5}{4}\right) \approx -32.0° \)

周波数が高くなると、位相差が小さくなります。

時定数と過渡応答

RC回路の時定数 \( \tau \) は:

\[ \tau = RC \]

これは、コンデンサの充放電にかかる時間の目安になります。

時定数の意味

  • 1τ後:約63.2%まで変化
  • 3τ後:約95%まで変化
  • 5τ後:約99%まで変化(ほぼ完了)

実用回路での注意点

実際の回路設計での注意

  • 寄生容量:配線や素子間の不要な容量
  • 寄生インダクタンス:配線の不要なインダクタンス
  • 抵抗の周波数特性:高周波では抵抗値が変化
  • コンデンサの損失:理想的でない特性
  • 温度特性:温度による特性変化

測定と検証

実際の回路では、以下の方法で特性を測定・検証できます:

  1. 周波数応答測定:ネットワークアナライザを使用
  2. 時間応答測定:オシロスコープで波形観測
  3. 位相測定:位相差計や2チャンネルオシロスコープ
  4. インピーダンス測定:LCRメータを使用

学習のポイント

RC回路の周波数特性は、フィルタ回路、発振回路、増幅回路など、多くの電子回路の基礎となります。単純な計算だけでなく、物理的な意味を理解することで、より複雑な回路の設計や解析にも応用できるようになります。

発展的な学習内容

次のステップへ

  • 複素インピーダンス:s領域での解析
  • 伝達関数:入出力の関係を関数で表現
  • ボード線図:周波数特性のグラフ表現
  • フィルタ設計:バターワース、チェビシェフフィルタ
  • アクティブフィルタ:オペアンプを使った高性能フィルタ
  • スイッチング回路:デジタル信号処理への応用
  • 雑音解析:熱雑音やショット雑音の影響

類似問題への対応

このタイプの問題では、以下のようなバリエーションもあります:

パターン1:RL回路

コイルの場合は周波数に比例してリアクタンスが増加します:

\[ X_L = 2\pi f L \quad \Rightarrow \quad \frac{X_{L2}}{X_{L1}} = \frac{f_2}{f_1} \]

パターン2:RLC回路

抵抗、コイル、コンデンサが混在する場合は、共振現象も考慮する必要があります:

\[ Z = R + j(X_L - X_C) = R + j\left(2\pi f L - \frac{1}{2\pi f C}\right) \]

パターン3:並列回路

並列接続の場合はアドミタンスを使った計算が便利です:

\[ Y = \frac{1}{R} + j2\pi f C \quad \text{(RC並列)} \]

実際の電気機器での応用

RC回路の原理は、身の回りの多くの電気機器で使われています:

機器・システム RC回路の役割 重要な特性
スピーカーシステム クロスオーバーネットワーク 周波数分離特性
無線通信機 変調・復調回路 搬送波除去特性
電源回路 リップルフィルタ 高周波ノイズ除去
測定器 入力カップリング 直流成分除去
マイコン回路 リセット回路 電源投入時の遅延
モータ制御 速度検出フィルタ ノイズ除去特性

設計時の考慮事項

実用的な設計のポイント

  1. 素子の選定:精度、温度特性、周波数特性を考慮
  2. レイアウト:寄生容量・インダクタンスを最小化
  3. グラウンド設計:ノイズ対策と信号品質向上
  4. シールド:外部ノイズからの保護
  5. 電源設計:安定した動作電圧の確保

故障診断とトラブルシューティング

RC回路で問題が発生した場合の診断方法:

よくある故障とその症状

  • コンデンサの劣化:容量値の変化、漏れ電流の増加
  • 抵抗の劣化:抵抗値の変化、ノイズの発生
  • はんだ不良:接触抵抗の増加、断続的な動作
  • 配線の断線:完全な動作停止
  • 短絡:異常な電流、発熱

学習効果を高めるための演習

練習問題例

1. RC回路で、周波数が2倍になったとき、電流はどう変化するか?

2. カットオフ周波数が100Hzのハイパスフィルタを設計するには?

3. 時定数1msの回路で、90%充電されるまでの時間は?

学習のまとめ

RC回路の周波数特性を理解することで、フィルタ設計、信号処理、ノイズ対策など、実用的な回路設計の基礎が身につきます。計算だけでなく、物理的な現象の理解を深めることが重要です。

学習のまとめ

RC回路の周波数特性を理解することで、フィルタ設計、信号処理、ノイズ対策など、実用的な回路設計の基礎が身につきます。計算だけでなく、物理的な現象の理解を深めることが重要です。

よし、今度はRC回路の問題やで!交流回路の中でも実用的で大事な分野や。

4Ωの抵抗とコンデンサが直列に繋がってて、周波数が50Hzから60Hzに変わったときに電流がどう変化するかを求める問題やな。

交流回路では周波数が変わると、コンデンサの性質が変わるんや。これがポイントやで!まずは50Hzのときの状況を整理してみよう。何が分かってるかな?

【50Hz時の与えられた条件】

・抵抗:\( R = 4 \, \mathrm{[\Omega]} \)

・コンデンサ:静電容量 \( C \, \mathrm{[F]} \)(値は未知)

・電源電圧:\( E = 100 \, \mathrm{[V]} \)(実効値)

・周波数:\( f_1 = 50 \, \mathrm{[Hz]} \)

・流れた電流:\( I_1 = 20 \, \mathrm{[A]} \)(実効値)

【60Hz時に求めるもの】

・電源電圧:\( E = 100 \, \mathrm{[V]} \)(同じ)

・周波数:\( f_2 = 60 \, \mathrm{[Hz]} \)

・流れる電流:\( I_2 = ? \, \mathrm{[A]} \)

【解法の方針】

1. 50Hz時の回路全体のインピーダンスを求める

2. そこからコンデンサのリアクタンスを計算する

3. 60Hz時のコンデンサのリアクタンスを求める

4. 60Hz時の回路全体のインピーダンスを計算する

5. オームの法則で60Hz時の電流を求める

よし、方針が決まったな!そしたらまずは基本を確認しておこう。

RC直列回路では、抵抗とコンデンサのインピーダンスがどう合成されるか覚えてるか?それから、コンデンサのリアクタンスが周波数とどんな関係にあるかも重要やで。

【RC直列回路の基本知識】

1. 各素子のインピーダンス

・抵抗:\( Z_R = R \)(周波数に関係なく一定)

・コンデンサ:\( Z_C = \frac{1}{\omega C} = \frac{1}{2\pi f C} \)(周波数に反比例)

2. RC直列回路の合成インピーダンス

抵抗とコンデンサが直列接続されている場合:

→ 横スクロールして下さい →

\[ Z = \sqrt{R^2 + X_C^2} \]

ここで \( X_C \) はコンデンサの容量リアクタンスです。

3. 周波数とリアクタンスの関係

コンデンサの容量リアクタンス:

→ 横スクロールして下さい →

\[ X_C = \frac{1}{2\pi f C} \]

重要ポイント:周波数が高くなると、コンデンサのリアクタンスは小さくなります!

完璧や!基本は大丈夫やな。そしたら最初のステップ、50Hzのときの回路全体のインピーダンスを求めてみよう。

オームの法則 \( V = I \times Z \) を使えば簡単やで。電圧と電流が分かってるから、インピーダンスが求められるな。

【ステップ1:50Hz時の回路全体インピーダンス】

オームの法則を使って、回路全体のインピーダンス \( Z_1 \) を求めます:

→ 横スクロールして下さい →

\[ \begin{aligned} Z_1 &= \frac{E}{I_1} \\[10pt] &= \frac{100}{20} \\[10pt] &= 5 \, \mathrm{[\Omega]} \end{aligned} \]

【計算の意味】

この \( 5 \, \mathrm{[\Omega]} \) という値は、50Hzにおける抵抗とコンデンサを合成した全体の「インピーダンス」です。

これは抵抗成分(4Ω)とリアクタンス成分の合成値なので、必ず抵抗値(4Ω)より大きくなります。

【次への準備】

この合成インピーダンス 5Ω と抵抗 4Ω が分かれば、ピタゴラスの定理でコンデンサのリアクタンスが求められます。

ナイス!そしたら次に、50Hzのときのコンデンサのリアクタンスを求めてみよう。

RC直列回路では、抵抗とリアクタンスが直角の関係にあるから、ピタゴラスの定理が使えるんや。\( Z^2 = R^2 + X_C^2 \) の関係やな。

【ステップ2:50Hz時のコンデンサリアクタンス】

RC直列回路のインピーダンス関係式:

→ 横スクロールして下さい →

\[ Z_1^2 = R^2 + X_{C1}^2 \]

これを \( X_{C1} \) について解くと:

→ 横スクロールして下さい →

\[ \begin{aligned} X_{C1}^2 &= Z_1^2 - R^2 \\[10pt] &= 5^2 - 4^2 \\[10pt] &= 25 - 16 \\[10pt] &= 9 \\[10pt] X_{C1} &= 3 \, \mathrm{[\Omega]} \end{aligned} \]

【計算の確認】

検算:\( \sqrt{4^2 + 3^2} = \sqrt{16 + 9} = \sqrt{25} = 5 \, \mathrm{[\Omega]} \) ✓

【重要な発見】

50Hzのとき、コンデンサのリアクタンスは 3Ω でした。

この値を使って、60Hzのときのリアクタンスを計算できます。

よっしゃ!50Hzでのリアクタンスが3Ωって分かったな。そしたら次が重要やで。

周波数が50Hzから60Hzに変わったとき、コンデンサのリアクタンスはどう変化するか計算してみよう。コンデンサのリアクタンスは周波数に反比例するのがポイントや!

【ステップ3:60Hz時のコンデンサリアクタンス】

コンデンサの容量リアクタンスは周波数に反比例します:

→ 横スクロールして下さい →

\[ X_C = \frac{1}{2\pi f C} \]

同じコンデンサ(\( C \) が同じ)なので、周波数比で計算できます:

→ 横スクロールして下さい →

\[ \begin{aligned} \frac{X_{C2}}{X_{C1}} &= \frac{f_1}{f_2} \\[10pt] X_{C2} &= X_{C1} \times \frac{f_1}{f_2} \\[10pt] &= 3 \times \frac{50}{60} \\[10pt] &= 3 \times \frac{5}{6} \\[10pt] &= 2.5 \, \mathrm{[\Omega]} \end{aligned} \]

【周波数変化の効果】

・50Hz → 60Hz:周波数が 1.2倍 に増加

・リアクタンス:3Ω → 2.5Ω に減少(\( \frac{1}{1.2} = \frac{5}{6} \) 倍)

【物理的意味】

周波数が高くなると、コンデンサは電流を通しやすくなります(リアクタンスが小さくなる)。

ええ感じや!60Hzでのリアクタンスが2.5Ωになったな。そしたら次に、60Hzでの回路全体のインピーダンスを求めてみよう。

抵抗は周波数が変わっても4Ωのままやけど、リアクタンスが3Ωから2.5Ωに変わったから、全体のインピーダンスも変わるんやで。

【ステップ4:60Hz時の回路全体インピーダンス】

60Hz時の各値:

・抵抗:\( R = 4 \, \mathrm{[\Omega]} \)(変化なし)

・コンデンサリアクタンス:\( X_{C2} = 2.5 \, \mathrm{[\Omega]} \)

RC直列回路の合成インピーダンス:

→ 横スクロールして下さい →

\[ \begin{aligned} Z_2 &= \sqrt{R^2 + X_{C2}^2} \\[10pt] &= \sqrt{4^2 + 2.5^2} \\[10pt] &= \sqrt{16 + 6.25} \\[10pt] &= \sqrt{22.25} \\[10pt] &\approx 4.717 \, \mathrm{[\Omega]} \end{aligned} \]

【インピーダンスの変化】

・50Hz時:\( Z_1 = 5.0 \, \mathrm{[\Omega]} \)

・60Hz時:\( Z_2 = 4.717 \, \mathrm{[\Omega]} \)

周波数が高くなると、コンデンサのリアクタンスが小さくなるため、回路全体のインピーダンスも小さくなりました。

よし!60Hzでのインピーダンスが約4.717Ωって求まったな。そしたら最後に、オームの法則で60Hzのときの電流を求めてみよう。

電圧は100Vのまま変わらんから、インピーダンスが小さくなった分、電流は大きくなるはずやで。計算してみよか!

【ステップ5:60Hz時の電流計算】

オームの法則を使って電流を求めます:

→ 横スクロールして下さい →

\[ \begin{aligned} I_2 &= \frac{E}{Z_2} \\[10pt] &= \frac{100}{4.717} \\[10pt] &\approx 21.2 \, \mathrm{[A]} \end{aligned} \]

【結果の比較】

・50Hz時:\( I_1 = 20.0 \, \mathrm{[A]} \)

・60Hz時:\( I_2 = 21.2 \, \mathrm{[A]} \)

【物理的解釈】

周波数が高くなると:

1. コンデンサのリアクタンスが小さくなる

2. 回路全体のインピーダンスが小さくなる

3. 同じ電圧に対して電流が大きくなる

【選択肢との照合】

計算結果 21.2A は選択肢(3)と一致します。

完璧や!答えは (3) 21.2A やな。でも計算結果だけじゃなくて、答えが妥当かどうかも確認してみよう。

周波数が50Hzから60Hzに上がったとき、電流が20Aから21.2Aに増えたんやけど、これは理論的に正しいかな?

【答えの妥当性確認】

1. 理論的な予想

・周波数が高くなる → コンデンサのリアクタンスが小さくなる

・リアクタンスが小さくなる → 回路全体のインピーダンスが小さくなる

・インピーダンスが小さくなる → 電流が大きくなる

✓ 20A → 21.2A の増加は理論と一致

2. 数値の妥当性

・周波数の変化:50Hz → 60Hz(20%増加)

・電流の変化:20A → 21.2A(6%増加)

コンデンサの影響は抵抗と合成されるため、周波数の変化率より電流の変化率が小さくなるのは妥当です。

3. 極限ケースでの確認

・もし抵抗が0Ωなら:電流は周波数に比例して1.2倍(24A)になる

・もしコンデンサが無限大なら:電流は変化しない(20A)

・実際は中間的な値(21.2A)→ 妥当

素晴らしい!理論的にも数値的にも妥当な答えやな。そしたら他の選択肢がなんでダメなのかも確認してみよう。

選択肢を見ると、21.2Aより小さい値も大きい値もあるな。どんな間違いをすると、そういう値になってしまうか考えてみよか。

【他の選択肢の検討】

選択肢(1) 16.7A:電流が減少

これは「周波数が高くなると電流が減る」という間違った理解。コイル回路と混同した可能性があります。コイルの場合は周波数が高くなるとリアクタンスが大きくなって電流が減ります。

選択肢(2) 18.6A:電流が減少

同様に周波数特性を逆に理解した場合の値。または計算ミスの可能性。

選択肢(3) 21.2A:正解

✓ 正しい計算結果

選択肢(4) 24.0A:電流が過大

これは単純に電流が周波数に比例すると考えた場合:\( 20 \times \frac{60}{50} = 24A \)

抵抗成分を無視した間違いです。

選択肢(5) 25.6A:電流が過大

何らかの計算ミス。考えられる原因は公式の間違いや数値の取り違えなど。

【よくある間違いパターン】

・コイルとコンデンサの周波数特性を混同

・抵抗成分を無視した単純比例計算

・ピタゴラスの定理の計算ミス

よっしゃ!間違いパターンも理解できたな。そしたら、この問題で使った重要な知識をまとめておこう。

RC回路の周波数特性は電験三種でよく出るし、実際の電子回路でも重要やからな。フィルタ回路とか、電源回路とかでよく使われるんやで。

【重要知識のまとめ】

1. 周波数特性の基本

・抵抗:周波数に関係なく一定

・コンデンサのリアクタンス:\( X_C = \frac{1}{2\pi f C} \)(周波数に反比例)

・コイルのリアクタンス:\( X_L = 2\pi f L \)(周波数に比例)

2. RC直列回路の計算手順

1. 与えられた条件からインピーダンスを求める(\( Z = \frac{V}{I} \))

2. ピタゴラスの定理でリアクタンスを求める(\( X_C = \sqrt{Z^2 - R^2} \))

3. 周波数比でリアクタンスの変化を計算(\( X_{C2} = X_{C1} \times \frac{f_1}{f_2} \))

4. 新しいインピーダンスを計算(\( Z_2 = \sqrt{R^2 + X_{C2}^2} \))

5. オームの法則で電流を求める(\( I = \frac{V}{Z} \))

3. 覚えておくべき関係式

・RC直列:\( Z = \sqrt{R^2 + X_C^2} \)

・RL直列:\( Z = \sqrt{R^2 + X_L^2} \)

・RLC直列:\( Z = \sqrt{R^2 + (X_L - X_C)^2} \)

ええ感じで整理できたな!そしたら最後に、この問題で学んだことを実際の電気回路でどう活かせるかも教えたるわ。

RC回路は電子機器の中でめちゃくちゃよく使われてるんや。フィルタ回路、タイマー回路、電源の平滑回路なんかで活躍してるで。どんな場面で今日の知識が役立つと思う?

RC回路の周波数特性について学んだことで、実際の電子回路での応用が見えてきました。

特に印象的だったのは、周波数が変わるとコンデンサの「通しやすさ」が変わるということです。低い周波数では電流を通しにくく、高い周波数では通しやすくなる特性ですね。

これはフィルタ回路で重要になりそうです。例えば、高い周波数のノイズを除去したい場合や、逆に低い周波数成分を除去したい場合に、RC回路の周波数特性を利用できるのではないでしょうか。

また、電源回路でのリップル除去や、オーディオ機器での音質調整などでも、今日学んだ周波数による電流の変化が関係していそうです。

実際の回路設計では、必要な周波数特性に合わせて抵抗値とコンデンサ容量を選ぶ必要があるのでしょうね。今日の計算方法が、そういった設計の基礎になっているのだと理解できました。

おお、素晴らしい理解やな!まさにその通りや。

RC回路は「ローパスフィルタ」っていって、高い周波数をカットして低い周波数を通すフィルタの基本形なんや。スピーカーのツイーター保護回路とか、電源のノイズ除去とか、あちこちで使われてるで。

それから、君が言ったオーディオ機器のトーンコントロール、これもRC回路の応用や。周波数特性を調整して音質を変えてるんやな。

あとはタイマーIC(555とか)の時定数回路、LED調光回路、モーター制御のソフトスタート回路なんかでも活躍してるで。今日学んだ基本がいろんなところで生きてくるんやで〜

先生の具体例を聞いて、RC回路がこんなに身近で重要だとは思いませんでした!

ローパスフィルタという名前も初めて知りました。「低い周波数を通す」から「ローパス」なのですね。スピーカーのツイーター保護というのは、高音域の過大な信号からツイーターを守るということでしょうか。

タイマーICでの時定数回路というのも興味深いです。RC回路の充放電特性を利用したタイミング制御ということでしょうか。今日は周波数特性を学びましたが、RC回路には時間的な特性もあるのですね。

LED調光回路やモーター制御のソフトスタートも、急激な変化を滑らかにするという点で、RC回路の特性を活用していることが想像できます。

今日学んだ「周波数が変わると電流が変わる」という基本原理が、これほど多くの実用回路に応用されているとは驚きです。電験三種の勉強が、実際の技術に直結していることを実感できました。

今度電子機器を見るときは、「この中にもRC回路が使われているかも」と意識して見てみたいと思います!

解説まとめ

■ RC回路の周波数特性とは

RC回路(抵抗とコンデンサの直列回路)は周波数によってインピーダンスが変化する特性を持ちます。これは、コンデンサのリアクタンス(容量性リアクタンス)が周波数に反比例するためです。この特性は、フィルタ回路や電源回路の設計において重要な役割を果たし、電気主任技術者にとって必須の知識です。

RC直列回路

R = 4Ω ── C [F] ── AC電源

(抵抗4Ωとコンデンサの直列接続)

■ 計算手順と公式

  1. 各素子のインピーダンス

    抵抗、コイル、コンデンサのインピーダンスは以下のように表されます。

    抵抗:\( \dot{Z}_R = R \ \mathrm{[\Omega]} \)

    コイル:\( \dot{Z}_L = j\omega L = j2\pi f L \ \mathrm{[\Omega]} \)

    コンデンサ:\( \dot{Z}_C = \frac{1}{j\omega C} = \frac{1}{j2\pi f C} \ \mathrm{[\Omega]} \)

  2. 容量性リアクタンス

    コンデンサのリアクタンス(虚数部の絶対値)は周波数に反比例します。

    \( X_C = \frac{1}{2\pi f C} \ \mathrm{[\Omega]} \)

  3. RC直列回路のインピーダンス

    抵抗とコンデンサが直列接続された場合の合成インピーダンスは以下のようになります。

    \( Z = \sqrt{R^2 + X_C^2} \ \mathrm{[\Omega]} \)

  4. オームの法則の適用

    交流回路におけるオームの法則により電流を求めます。

    \( I = \frac{V}{Z} \ \mathrm{[A]} \)

■ 具体的な計算例

問題条件

  • 抵抗:\( R = 4 \ \mathrm{\Omega} \)
  • コンデンサ:静電容量 \( C \ \mathrm{[F]} \)(未知)
  • 50Hz時:電圧100V、電流20A
  • 60Hz時:電圧100V、電流?

50Hz時の解析

Step 1: 回路全体のインピーダンス

\[ \begin{aligned} Z_{50} &= \frac{V}{I} \\[5pt] &= \frac{100}{20} \\[5pt] &= 5 \ \mathrm{[\Omega]} \end{aligned} \]

Step 2: コンデンサのリアクタンス

\[ \begin{aligned} X_{C50} &= \sqrt{Z_{50}^2 - R^2} \\[5pt] &= \sqrt{5^2 - 4^2} \\[5pt] &= \sqrt{25 - 16} \\[5pt] &= 3 \ \mathrm{[\Omega]} \end{aligned} \]

60Hz時の解析

Step 3: 周波数変化によるリアクタンス

リアクタンスは周波数に反比例するため:

\[ \begin{aligned} X_{C60} &= \frac{f_{50}}{f_{60}} \times X_{C50} \\[5pt] &= \frac{50}{60} \times 3 \\[5pt] &= \frac{5}{6} \times 3 \\[5pt] &= 2.5 \ \mathrm{[\Omega]} \end{aligned} \]

Step 4: 60Hz時のインピーダンス

\[ \begin{aligned} Z_{60} &= \sqrt{R^2 + X_{C60}^2} \\[5pt] &= \sqrt{4^2 + 2.5^2} \\[5pt] &= \sqrt{16 + 6.25} \\[5pt] &= \sqrt{22.25} \\[5pt] &\approx 4.717 \ \mathrm{[\Omega]} \end{aligned} \]

Step 5: 60Hz時の電流計算

\[ \begin{aligned} I_{60} &= \frac{V}{Z_{60}} \\[5pt] &= \frac{100}{4.717} \\[5pt] &\approx 21.2 \ \mathrm{[A]} \end{aligned} \]

周波数とリアクタンスの関係

コンデンサのリアクタンス:\( X_C = \frac{1}{2\pi f C} \)

周波数が50Hz → 60Hzに増加すると、リアクタンスは \( \frac{5}{6} \) 倍に減少

リアクタンスが減少 → インピーダンスが減少 → 電流が増加

計算結果の比較

周波数 [Hz] リアクタンス [Ω] インピーダンス [Ω] 電流 [A]
50 3.0 5.0 20.0
60 2.5 4.717 21.2

結論:60Hz時の電流は約21.2A 答え:(3)

■ 実務上の留意点

RC回路の周波数特性は、電力系統や制御回路において重要な設計要素となります。特に高調波対策や電源品質管理において必須の知識です。