【第三種電気主任技術者試験】同期機(電動機・発電機)の完全解説 - 構造から特性・制御まで

目次

2. 同期機の基本構造

タービンと連結された大型の同期機 タービンと連結された大型の同期機
イメージ図: タービンと連結された大型の同期機

同期機は、基本的に「固定子(ステータ)」と「回転子(ロータ)」の2つの主要部分から構成されています。ここでは、同期機特有の構造と各部の役割について解説します。

2.1 固定子(ステータ)の構造

固定子は同期機の外側の静止している部分で、次の要素から構成されています:

  • 固定子鉄心:珪素鋼板を積層した円筒形の構造物で、スロットと呼ばれる溝が内周に設けられています
  • 固定子巻線:スロットに配置された三相巻線で、通常は分布巻および短節巻が採用されています
  • 固定子フレーム:固定子鉄心を支持し、電機子全体を保護する外枠です
同期機の固定子の構造 同期機の固定子の構造
イメージ図: 同期機の固定子の構造と巻線配置

同期発電機の場合、固定子は「電機子」と呼ばれ、回転磁界によって誘導起電力が発生し、電力を供給します。同期電動機の場合、固定子は交流電源が接続され、回転磁界を発生させる役割を担います。

固定子巻線の接続
同期発電機の固定子巻線は、大型機では通常Y(スター)結線が採用されています。これにより、高電圧発生時の相間絶縁が簡素化され、また零相電流(第3次高調波電流など)が流れないという利点があります。小型機ではΔ(デルタ)結線も使用されることがあります。

2.2 回転子(ロータ)の構造

回転子は同期機の内側の回転する部分で、次の要素から構成されています:

  • 回転子鉄心:鋼鉄製の磁性体で、突極形または円筒形があります
  • 界磁巻線:回転子鉄心に巻かれた直流電流を流す巻線で、電磁石を形成します
  • ダンパ巻線:回転子表面に埋め込まれた導体棒で、始動と過渡安定性の向上に役立ちます
  • スリップリングと整流子:回転子に直流電流を供給するための装置です
同期機の固定子の構造
イメージ図: 同期機の回転子(左:突極形、右:円筒形)

回転子に設けられた界磁巻線に直流電流を流すことで、回転子は電磁石となります。この電磁石が固定子の回転磁界と同期して回転することが、同期機の基本原理です。

2.3 突極形と円筒形回転子

同期機の回転子は、その構造によって主に2種類に分類されます:

突極形回転子 円筒形回転子
磁極が回転子から突き出た形状(明確な磁極構造) 回転子表面が円筒状で、分散配置された界磁巻線
低速・中速機(水力発電機など)に適用 高速機(火力・原子力発電機など)に適用
極数が多い(4極以上が一般的) 極数が少ない(主に2極または4極)
リラクタンストルクが発生する ほぼ等方的な磁気回路
機械的強度に制限あり 高い機械的強度

突極形と円筒形の選択基準
回転速度が選択の主な基準となります。火力発電所のタービン発電機は3000rpm(50Hz地域)または3600rpm(60Hz地域)の高速で運転されるため、遠心力に耐えるよう円筒形が採用されます。一方、水力発電機は水車と直結するため50〜600rpmの低速運転となり、突極形が採用されます。また、ディーゼル発電機などの中速機では、突極形が一般的です。

突極形回転子では、磁束が磁極面に集中するため、回転子の直軸方向(磁極中心線方向)と横軸方向(磁極間の方向)でリアクタンスが異なります。これにより、突極機ではリラクタンストルクが発生し、円筒形と比べて特性に違いが現れます。

2.4 界磁系統と励磁方式

回転子の界磁巻線に直流電流を供給するための方式を「励磁方式」と呼びます。主な励磁方式には次のようなものがあります:

  • 他励方式:外部の独立した直流電源から界磁電流を供給する方式
  • 自励方式:同期機自身の出力の一部を整流して界磁電流を供給する方式
  • ブラシレス励磁方式:主軸に小型の交流発電機(励磁機)と回転整流器を取り付け、スリップリングとブラシを不要にした方式
  • 静止励磁方式:半導体整流器を用いて交流電源から直流電流を得る方式

励磁制御の重要性
同期発電機では、励磁電流を制御することにより、出力電圧や無効電力を調整することができます。また、同期電動機では、励磁電流を変化させることで力率を制御できます。このため、励磁系統は同期機の制御において極めて重要な役割を果たしています。現代の大型発電所では、AVR(自動電圧調整器)などの電子制御装置により、励磁電流が精密に制御されています。

ブラシレス励磁方式は、保守の手間を大幅に減らすことができるため、現代の同期機では広く採用されています。特に大型発電機では、ブラシの摩耗や火花による問題を避けるために重要な技術となっています。

同期機の基本構造のまとめ

  • 同期機は固定子(ステータ)と回転子(ロータ)から構成される
  • 固定子には三相交流巻線が配置され、発電機では電機子、電動機では回転磁界発生装置として機能する
  • 回転子には界磁巻線が配置され、直流電流により電磁石を形成する
  • 回転子の形状により突極形と円筒形に分類され、運転速度によって使い分けられる
  • 突極形は低・中速機(水力発電機など)、円筒形は高速機(火力発電機など)に適している
  • 界磁電流の供給方式には他励方式、自励方式、ブラシレス励磁方式、静止励磁方式などがある
  • 励磁電流の制御により、出力電圧、無効電力、力率などを調整することができる

3. 同期機の動作原理

同期機の動作原理は、回転磁界と回転子の磁極が同期する現象に基づいています。このセクションでは、同期機がどのように電気エネルギーと機械的エネルギーを変換するかを解説します。

3.1 回転磁界と同期回転

三相交流が固定子巻線に流れると、空間的に120°ずつ離れた巻線に時間的に120°の位相差を持つ電流が流れ、合成磁界が一定の速度で回転する「回転磁界」が発生します。

三相巻線による回転磁界の発生
イメージ図: 三相巻線による回転磁界の発生メカニズム

回転磁界の速度である「同期速度」は次の式で表されます:

\[n_s = \frac{120f}{p}\]

ここで:

  • \(n_s\):同期速度 [r/min](毎分回転数)
  • \(f\):電源周波数 [Hz]
  • \(p\):極数

同期速度の計算例
4極の同期機を50Hzの電源で運転する場合の同期速度は:

\begin{align*} n_s &= \frac{120f}{p} \\ &= \frac{120 \times 50}{4} \\ &= \frac{6000}{4} \\ &= 1500 \, \mathrm{r/min} \end{align*}

つまり、毎分1500回転の速度で回転します。一般的に使用される同期機の極数と同期速度の関係は以下の通りです:

  • 2極:3000 r/min(50Hz)/ 3600 r/min(60Hz)
  • 4極:1500 r/min(50Hz)/ 1800 r/min(60Hz)
  • 6極:1000 r/min(50Hz)/ 1200 r/min(60Hz)
  • 8極:750 r/min(50Hz)/ 900 r/min(60Hz)

同期機では、回転子の界磁極が固定子の作る回転磁界と同じ速度で回転します。これが「同期回転」と呼ばれる状態です。同期機が安定して運転するためには、回転子の磁極が回転磁界に引っ張られながらも、一定の角度差(負荷角または出力角)を保って回転する必要があります。

3.2 同期発電機の原理

同期発電機では、外部の原動機(タービンなど)によって回転子を回転させます。回転子の界磁極が作る磁界が固定子巻線を横切ることで、電磁誘導によって固定子巻線に交流起電力が発生します。

同期発電機の動作原理
イメージ図: 同期発電機の動作原理

発電機の誘導起電力の大きさは、次の式で表されます:

\[E = 4.44 f N \Phi K_w\]

ここで:

  • \(E\):誘導起電力 [V]
  • \(f\):周波数 [Hz]
  • \(N\):巻線の巻数
  • \(\Phi\):磁束 [Wb]
  • \(K_w\):巻線係数

同期発電機の出力周波数は回転速度に比例し、極数によって決まります:

\[f = \frac{np}{120}\]

ここで:

  • \(f\):発生する交流の周波数 [Hz]
  • \(n\):回転速度 [r/min]
  • \(p\):極数

発電機の無負荷特性
無負荷状態での同期発電機の端子電圧は、主に界磁電流によって決まります。界磁電流を増加させると、ある程度までは端子電圧がほぼ直線的に上昇しますが、鉄心の磁気飽和により、やがて上昇率は低下します。この関係を示したグラフを「無負荷飽和曲線」と呼びます。

3.3 同期電動機の原理

同期電動機では、固定子に三相交流を供給して回転磁界を発生させます。回転子の界磁極が固定子の回転磁界と相互作用し、引き合う力(トルク)が発生して回転します。

同期電動機のトルクは次の式で近似的に表されます:

\[T = \frac{3V_1E_f}{X_s\omega_s}\sin\delta\]

ここで:

  • \(T\):発生トルク [N·m]
  • \(V_1\):固定子相電圧 [V]
  • \(E_f\):界磁による誘導起電力 [V]
  • \(X_s\):同期リアクタンス [Ω]
  • \(\omega_s\):同期角速度 [rad/s]
  • \(\delta\):負荷角(出力角)[rad]

この式から、同期電動機のトルクは負荷角の正弦関数に比例することがわかります。負荷角が90°を超えると、トルクは減少に転じ、180°で零になります。このため、最大出力角を超える負荷を加えると、電動機は同期はずれを起こし、停止に至ります。

同期電動機の特徴
同期電動機の主な特徴は以下の通りです:

  • 回転速度が負荷に関係なく一定(同期速度)
  • 界磁電流の調整により力率制御が可能(進み、遅れ、1.0)
  • 始動時に自己始動能力がない(補助始動装置が必要)
  • 突極機ではリラクタンストルクも発生
  • 安定運転には同期化力(同期トルク)が必要

3.4 フェーザ図と等価回路

同期機の電気的特性を理解するために、フェーザ図と等価回路が用いられます。

同期機の等価回路
図9: 同期機の簡略等価回路

同期機の基本的な等価回路は次のように表されます:

  • 発電機モード:\(E_f = V_t + jX_s I_a + R_a I_a\)
  • 電動機モード:\(E_f = V_t - jX_s I_a - R_a I_a\)

ここで:

  • \(E_f\):界磁による誘導起電力
  • \(V_t\):端子電圧
  • \(X_s\):同期リアクタンス
  • \(I_a\):電機子電流
  • \(R_a\):電機子巻線抵抗
同期機のフェーザ図
図10: 同期機のフェーザ図(左:発電機モード、右:電動機モード)

フェーザ図は、電圧、電流、磁束などの関係を視覚的に表現するもので、同期機の動作状態を理解するのに役立ちます。負荷条件や励磁状態によって、フェーザ図の形状が変化します。

突極機のリアクタンス
突極形同期機では、磁気回路の非対称性により、直軸リアクタンス \(X_d\) と横軸リアクタンス \(X_q\) が異なります。一般に \(X_d > X_q\) となります。この違いにより、突極機では電磁トルクに加えてリラクタンストルクが発生します。円筒形同期機では、磁気回路がほぼ対称的で \(X_d \approx X_q\) となり、リラクタンストルクはほとんど発生しません。

同期機の動作原理のまとめ

  • 同期機の回転速度は電源周波数と極数により決定され、\(n_s = \frac{120f}{p}\) で表される
  • 同期発電機では、外部からの機械的入力により回転子を回し、固定子巻線に交流起電力を誘導する
  • 同期電動機では、固定子の回転磁界と回転子の界磁極の相互作用によりトルクが発生する
  • 発生トルクは \(T \propto \sin\delta\) に比例し、負荷角 \(\delta\) が90°で最大となる
  • 回転子の界磁極と回転磁界の間には負荷角(出力角)\(\delta\) があり、これが出力を決定する
  • 同期機の電気的特性は等価回路とフェーザ図を用いて分析できる
  • 突極形同期機では、直軸リアクタンス \(X_d\) と横軸リアクタンス \(X_q\) が異なり、リラクタンストルクが発生する
  • 同期機の安定運転には、負荷角が安定範囲内(通常90°以内)に収まる必要がある

4. 同期機の特性

同期機の性能を理解するためには、その特性を知ることが重要です。このセクションでは、同期発電機と同期電動機の特性について解説します。

4.1 同期発電機の特性

同期発電機の主な特性には以下のようなものがあります:

  • 無負荷特性(磁化特性):界磁電流と端子電圧の関係を示す特性
  • 短絡特性:三相短絡時の界磁電流と短絡電流の関係を示す特性
  • 外部特性:負荷変動に対する端子電圧の変化を示す特性
  • 調整率:無負荷時と全負荷時の端子電圧の変化率

無負荷特性は、界磁電流 \(I_f\) に対する無負荷時の端子電圧 \(E_0\) を示し、鉄心の磁気飽和の影響が現れます。短絡特性は、三相短絡時の界磁電流と短絡電流が直線関係にあることを示します。

発電機の電圧調整率は次の式で定義されます:

\[\text{電圧調整率} = \frac{E_0 - V_t}{V_t} \times 100\%\]

ここで:

  • \(E_0\):無負荷時の端子電圧(定格負荷時と同じ界磁電流で)
  • \(V_t\):定格負荷時の端子電圧

負荷力率の影響
発電機の外部特性は負荷の力率によって大きく変化します。一般に:

  • 遅れ力率負荷(誘導性):負荷増加とともに端子電圧が低下
  • 力率1.0の負荷(抵抗性):負荷による電圧変動が小さい
  • 進み力率負荷(容量性):負荷増加とともに端子電圧が上昇

これは、負荷電流による電機子反作用の影響が力率によって異なるためです。

実際の発電所では、励磁制御(AVR)により端子電圧を一定に保つ運転が行われるため、これらの特性が直接見られることは少なくなっていますが、基本特性を理解することは重要です。

4.2 同期電動機の特性

同期電動機の主な特性には以下のようなものがあります:

  • 負荷角特性:負荷角(出力角)とトルク(出力)の関係を示す特性
  • V曲線:力率と界磁電流の関係を示す特性
  • 始動特性:始動時の電流とトルクの特性

同期電動機の負荷角-トルク特性は次の式で表されます:

円筒形同期電動機:

\[T = \frac{3V_1E_f}{X_d\omega_s}\sin\delta\]

突極形同期電動機:

\[T = \frac{3V_1E_f}{X_d\omega_s}\sin\delta + \frac{3V_1^2}{2\omega_s}\left(\frac{1}{X_q} - \frac{1}{X_d}\right)\sin2\delta\]

ここで:

  • 第1項:電磁トルク
  • 第2項:リラクタンストルク(突極形のみ)

突極形同期電動機では、電磁トルクに加えてリラクタンストルクが発生するため、最大トルクを発生する負荷角は90°より若干小さく、また同じ界磁電流でも円筒形よりもトルクが大きくなる傾向があります。

同期電動機の同期化力
同期電動機が安定に運転するためには、負荷トルクの変動に対して自己復帰力(同期化力)が必要です。この同期化力は負荷角が増加すると大きくなり、負荷角が90°で最大となります。これを超えると同期化力が減少し、最終的に同期外れ(脱調)を起こします。通常、安定運転のためには最大トルクの60〜70%以下の負荷で運転することが推奨されます。

4.3 V曲線と力率制御

同期電動機の重要な特性の一つに、V曲線があります。これは、負荷一定の条件で界磁電流を変化させたときの電機子電流の変化を示すもので、V字型の曲線となることからV曲線と呼ばれます。

同期電動機のV曲線
図13: 同期電動機のV曲線(異なる負荷条件での界磁電流vs電機子電流)

V曲線の特徴:

  • 界磁電流が少ない領域では、電動機は遅れ力率(誘導性)で運転
  • 界磁電流が適切な値のとき、力率は1.0(抵抗性)となり、電機子電流は最小
  • 界磁電流が多い領域では、電動機は進み力率(容量性)で運転

力率改善への応用
同期電動機の力率制御能力は、工場の力率改善に利用されます。通常、工場内の誘導電動機などが遅れ力率負荷となるため、系統全体の力率を改善するために同期電動機を過励磁運転(進み力率)することがあります。これにより、同期調相機として機能させ、無効電力を系統に供給することができます。計算例:5000kVAの容量を持つ同期電動機を力率0.8進みで運転すると、約3000kVarの無効電力を系統に供給できます。

V曲線は負荷によって異なり、負荷が大きいほどV字の底(最小電機子電流点)は高くなります。また、最小電機子電流を与える界磁電流(最適励磁)も負荷によって変化します。

4.4 同期安定度

同期安定度とは、同期機が同期状態を維持できる能力のことです。同期機が安定に運転するためには、負荷変動などの外乱に対して回転子が同期速度に戻る力(同期化力)が十分に働く必要があります。

同期安定度には、主に以下の2種類があります:

  • 定態安定度:小さな外乱に対して同期状態を維持できる能力
  • 過渡安定度:大きな外乱(短絡事故など)に対して同期状態を維持できる能力

安定度の向上対策
同期機の安定度を向上させるための主な方法は以下の通りです:

  • 高速度遮断器による事故除去時間の短縮
  • 送電線のリアクタンス低減(直列コンデンサの設置など)
  • 高速度励磁制御システムの採用
  • ダンパ巻線の適切な設計
  • 発電機連系用の高速再閉路装置
  • 電力系統安定化装置(PSS)の設置

同期安定度の限界は、発電機では送電電力が最大となる負荷角(通常90°前後)、電動機では最大トルクを発生する負荷角によって決まります。実際の運用では、安全余裕を考慮して、これらの限界よりも小さな負荷角で運転します。

同期機の特性のまとめ

  • 同期発電機の特性には無負荷特性、短絡特性、外部特性、調整率などがある
  • 発電機の端子電圧は負荷の力率によって変化し、遅れ力率では低下、進み力率では上昇する
  • 同期電動機の特性には負荷角特性、V曲線、始動特性などがある
  • 突極形同期機ではリラクタンストルクが発生し、特性に影響を与える
  • 同期電動機のV曲線は界磁電流と電機子電流の関係を示し、力率制御の基礎となる
  • 同期電動機は過励磁運転により進み力率となり、系統の力率改善に寄与できる
  • 同期安定度は同期機が同期状態を維持できる能力で、定態安定度と過渡安定度がある
  • 安定度の限界は最大出力(または最大トルク)を与える負荷角で決まる

5. 同期機の応用と制御

同期機は発電機と電動機の両方として幅広い分野で応用されています。このセクションでは、同期機の主な応用例と制御方法について解説します。

5.1 電力系統における発電応用

同期発電機は、電力系統における主要な発電設備として広く使用されています:

  • 火力発電:蒸気タービンと結合した2極または4極の円筒形発電機が使用されます
  • 水力発電:水車と直結した多極の突極形発電機が使用されます
  • 原子力発電:蒸気タービンと結合した2極の円筒形発電機が使用されます
  • ディーゼル発電:ディーゼルエンジンと結合した多極の突極形発電機が使用されます
  • ガスタービン発電:ガスタービンと結合した2極または4極の発電機が使用されます

電力系統では、同期発電機の制御は非常に重要です。主な制御項目には以下のものがあります:

  • 周波数制御:原動機の出力調整によって行われます(ガバナ制御)
  • 電圧制御:励磁電流の調整によって行われます(AVR制御)
  • 有効電力制御:原動機のトルク調整によって行われます
  • 無効電力制御:励磁電流の調整によって行われます

自動電圧調整器(AVR)の役割
AVRは発電機の端子電圧を検出し、設定値と比較して、その差に応じて励磁電流を自動的に調整するシステムです。これにより、負荷変動や系統擾乱があっても端子電圧を一定に保つことができます。現代のAVRは、端子電圧制御だけでなく、無効電力制御、力率制御、系統安定化機能(PSS)なども備えた多機能な装置になっています。

同期発電機は電力系統の安定性にも重要な役割を果たしています。特に、大型発電機は系統の短絡容量を高め、電圧安定性を向上させる効果があります。

5.2 同期電動機の産業応用

同期電動機は、以下のような特定の産業用途で使用されています:

  • 大型低速駆動装置:鉱山のホイスト、セメント工場のミル、圧延機など
  • 定速駆動が必要な用途:紙・繊維工場の連続プロセスなど
  • 力率改善装置:同期調相機として、系統の力率改善や電圧安定化に利用
  • 可変速駆動システム:インバータと組み合わせた高効率可変速駆動

同期調相機の適用例
同期調相機は、実質的に無負荷で運転される同期電動機で、励磁を調整することで系統に無効電力を供給または吸収します。例えば、長距離送電線の末端や大型変電所に設置され、電圧安定化や力率改善に使用されます。100MVAの同期調相機が0.8の進み力率で運転される場合、系統に約80Mvarの無効電力を供給できます。

同期電動機の選定では、以下の点を考慮します:

  • 負荷の特性(トルク-速度特性、始動要件など)
  • 速度や出力の範囲
  • 運転効率と力率
  • 始動方法と始動頻度
  • 環境条件(温度、湿度、粉塵など)
  • 制御方式(開ループ、閉ループなど)

5.3 同期電動機の始動方法

同期電動機は自己始動能力を持たないため、何らかの補助的な始動方法が必要です。主な始動方法は以下の通りです:

始動方法 原理 適用範囲 特徴
誘導電動機による始動 別の電動機で回転子を同期速度近くまで加速 大型機 始動電流が小さい、専用の始動機が必要
ダンパ巻線による非同期始動 回転子のダンパ巻線に誘導される電流によるトルクで始動 中小型機 構造が簡単、大きな始動電流が必要
始動巻線による始動 かご形誘導電動機の巻線を内蔵して始動 中型機 大きな始動トルクが得られる
リアクトル/オートトランス始動 低電圧で始動し、徐々に全電圧に移行 中大型機 始動電流を抑制できる
インバータによる始動 低周波から徐々に周波数を上げて始動 可変速運転機 始動電流が小さく、スムーズな始動が可能

ダンパ巻線による非同期始動(最も一般的な方法)の手順:

  1. 界磁巻線を抵抗器または放電抵抗器を通じて短絡する
  2. 固定子に電圧を印加すると、誘導電動機と同様に回転子のダンパ巻線に電流が誘導される
  3. 誘導トルクにより回転子が加速し、同期速度近くまで達する
  4. 適切なタイミングで界磁巻線に直流電流を流す(励磁する)
  5. 回転子が同期速度に引き込まれ、同期運転に移行する

同期引き込み現象
同期電動機の始動過程で最も重要な現象が「同期引き込み」です。回転子の速度が同期速度近くになったときに界磁電流を流すと、界磁極と回転磁界の間に引力が働き、回転子が同期速度に引き込まれます。引き込みを成功させるためには、適切なタイミングで十分な界磁電流を流すことが重要です。現代の電動機では、自動同期装置によって最適なタイミングで励磁が行われます。

5.4 並行運転と同期投入

複数の同期発電機を電力系統に接続して運転することを「並行運転」と呼びます。新たに発電機を系統に投入する操作を「同期投入」または「同期並列」と呼びます。

同期投入の条件(同期検査項目)は以下の通りです:

  1. 電圧の一致:発電機の端子電圧と系統電圧が等しいこと
  2. 周波数の一致:発電機の周波数と系統周波数が等しいこと
  3. 位相の一致:発電機の電圧位相と系統電圧位相が一致すること
  4. 相順の一致:発電機と系統の相順が同じであること

これらの条件を確認するために、同期検定器(シンクロスコープ)や同期検査リレーが使用されます。

同期投入の手順
1. 原動機を起動し、発電機を定格速度近くまで加速
2. 励磁装置を徐々に調整して、系統電圧と同じ端子電圧に設定
3. 原動機の速度調整により、系統周波数よりわずかに高い周波数に調整(0.1〜0.2Hz高め)
4. シンクロスコープで位相差を監視し、位相が一致する直前に遮断器を閉じる
5. 並列後、負荷分担を適切に調整(有効電力は原動機出力で、無効電力は励磁で調整)

並行運転時の電力分担の制御:

  • 有効電力の分担:原動機の調速機特性(ドループ特性)によって決まり、ガバナのスピードドループ設定により調整されます
  • 無効電力の分担:発電機の励磁電流(または端子電圧設定)によって調整されます

自動同期装置
現代の発電所では、同期投入は自動同期装置(オートシンクロナイザ)によって行われます。この装置は電圧、周波数、位相を自動的に監視・調整し、最適なタイミングで遮断器の投入信号を出します。これにより、人為的ミスによる非同期投入のリスクを低減し、機器の損傷や系統擾乱を防止します。

同期機の応用と制御のまとめ

  • 同期発電機は電力系統の主要な発電設備であり、火力、水力、原子力などの発電所で使用される
  • 同期発電機の主要な制御は周波数制御(原動機出力)と電圧制御(励磁電流)
  • 同期電動機は大型低速駆動、定速駆動、力率改善などの特定用途に使用される
  • 同期電動機の始動方法には、ダンパ巻線による非同期始動、始動機による始動、インバータ始動などがある
  • 同期引き込み現象は、回転子が同期速度に引き込まれる重要なプロセス
  • 並行運転のための同期投入条件は、電圧、周波数、位相、相順の一致
  • 並行運転時の有効電力は原動機出力で、無効電力は励磁電流で制御される
  • 現代の発電所では、自動同期装置により安全で確実な同期投入が行われる

6. 演習問題

6.1 基本計算問題

問題1:同期速度と極数の計算

50Hzの電源で750 r/minの同期速度で回転する同期電動機の極数を求めよ。

解答:

同期速度と極数、周波数の関係式は次のように表されます:

\[n_s = \frac{120f}{p}\]

ここで:

  • \(n_s\):同期速度 = 750 r/min
  • \(f\):電源周波数 = 50 Hz
  • \(p\):極数(求める値)

この式を極数 \(p\) について解きます:

\begin{align*} p &= \frac{120f}{n_s} \\[10pt] &= \frac{120 \times 50}{750} \\[10pt] &= \frac{6000}{750} \\[10pt] &= 8 \end{align*}

したがって、この同期電動機の極数は8極です。

確認のために、8極の同期電動機の同期速度を計算してみると:

\begin{align*} n_s &= \frac{120 \times 50}{8} \\ &= \frac{6000}{8} \\ &= 750 \, \mathrm{r/min} \end{align*}

計算結果が一致することを確認できました。

問題2:同期発電機の誘導起電力の計算

4極の同期発電機があり、毎極毎相の巻数が30、巻線係数が0.85、毎極の磁束が0.05 Wbである。回転速度が1500 r/minのとき、誘導される相電圧の実効値を求めよ。

解答:

同期発電機の誘導起電力(相電圧)は次の式で求められます:

\[E = 4.44 f N \Phi K_w\]

ここで:

  • \(E\):誘導起電力(相電圧)[V]
  • \(f\):周波数 [Hz]
  • \(N\):毎相の巻数(全極)
  • \(\Phi\):毎極の磁束 = 0.05 Wb
  • \(K_w\):巻線係数 = 0.85

まず、回転速度から周波数を計算します:

\[f = \frac{np}{120} = \frac{1500 \times 4}{120} = \frac{6000}{120} = 50 \, \mathrm{Hz}\]

次に、毎相の全巻数を計算します。毎極毎相の巻数が30なので、4極では:

\[N = 30 \times 4 = 120 \text{ 巻}\]

これらの値を誘導起電力の式に代入します:

\begin{align*} E &= 4.44 \times 50 \times 120 \times 0.05 \times 0.85 \\[10pt] &= 4.44 \times 50 \times 120 \times 0.05 \times 0.85 \\[10pt] &= 4.44 \times 50 \times 120 \times 0.0425 \\[10pt] &= 4.44 \times 50 \times 5.1 \\[10pt] &= 4.44 \times 255 \\[10pt] &= 1132.2 \, \mathrm{V} \end{align*}

したがって、誘導される相電圧の実効値は約1132 Vです。

問題3:同期電動機の出力と力率の計算

三相同期電動機が220V、60Hz、100Aで運転されており、効率は92%である。この電動機が0.85進みの力率で運転しているとき、機械的出力と無効電力を求めよ。

解答:

(1) 機械的出力の計算:

まず、三相電動機の入力電力を計算します:

\[P_i = \sqrt{3} \times V \times I \times \cos\phi\]

ここで:

  • \(P_i\):入力電力 [W]
  • \(V\):線間電圧 = 220 V
  • \(I\):線電流 = 100 A
  • \(\cos\phi\):力率 = 0.85(進み)

これらの値を式に代入すると:

\begin{align*} P_i &= \sqrt{3} \times 220 \times 100 \times 0.85 \\[10pt] &= 1.732 \times 220 \times 100 \times 0.85 \\[10pt] &= 1.732 \times 22000 \times 0.85 \\[10pt] &= 32397.8 \, \mathrm{W} \\[10pt] &= 32.4 \, \mathrm{kW} \end{align*}

機械的出力は、入力電力と効率の積で求められます:

\begin{align*} P_o &= P_i \times \eta \\[10pt] &= 32.4 \times 0.92 \\[10pt] &= 29.8 \, \mathrm{kW} \end{align*}

(2) 無効電力の計算:

三相回路の皮相電力は:

\[S = \sqrt{3} \times V \times I\] \begin{align*} S &= \sqrt{3} \times 220 \times 100 \\[10pt] &= 1.732 \times 22000 \\[10pt] &= 38104 \, \mathrm{VA} \\[10pt] &= 38.1 \, \mathrm{kVA} \end{align*}

無効電力は、皮相電力と力率から計算できます:

\[Q = S \times \sin\phi\]

ここで、\(\sin\phi = \sin(\cos^{-1}0.85) = \sin(31.79°) = 0.527\)

力率が進みであるため、同期電動機は系統に無効電力を供給しています:

\begin{align*} Q &= 38.1 \times 0.527 \\[10pt] &= 20.08 \, \mathrm{kvar} \end{align*}

したがって、電動機の機械的出力は約29.8 kW、供給している無効電力は約20.1 kvarです。

6.2 過去問題

問題4:同期発電機の電圧調整率(第三種電気主任技術者試験 類似問題)

定格出力3000kVA、定格電圧6600V、定格力率0.8(遅れ)の同期発電機がある。定格出力時の端子電圧を6600Vに保つように励磁した状態から、負荷を遮断したとき、端子電圧が7260Vになった。この発電機の電圧調整率を求めよ。

解答:

同期発電機の電圧調整率は次の式で定義されます:

\[\text{電圧調整率} = \frac{E_0 - V_t}{V_t} \times 100\%\]

ここで:

  • \(E_0\):無負荷時の端子電圧 = 7260 V
  • \(V_t\):定格負荷時の端子電圧 = 6600 V

この値を式に代入すると:

\begin{align*} \text{電圧調整率} &= \frac{7260 - 6600}{6600} \times 100\% \\[10pt] &= \frac{660}{6600} \times 100\% \\[10pt] &= 0.1 \times 100\% \\[10pt] &= 10\% \end{align*}

したがって、この同期発電機の電圧調整率は10%です。

この値は、定格出力(力率0.8遅れ)での運転から無負荷運転に移行したときの端子電圧の上昇率を表しています。電圧調整率が小さいほど、負荷変動に対する電圧変動が小さく、電圧特性が良いことを示します。この発電機の場合、10%は一般的な大型同期発電機としては標準的な値です。

演習問題のポイント

  • 同期速度の計算:\(n_s = \frac{120f}{p}\)を正確に使用すること
  • 同期発電機の誘導起電力:\(E = 4.44 f N \Phi K_w\)の物理的意味を理解すること
  • 三相回路の電力計算:有効電力 \(P = \sqrt{3} VI\cos\phi\)、無効電力 \(Q = \sqrt{3} VI\sin\phi\) を正確に使用すること
  • 電圧調整率の定義:\(\text{電圧調整率} = \frac{E_0 - V_t}{V_t} \times 100\%\) を理解すること
  • 同期電動機の引込みメカニズムと必要条件を理解すること
  • 単位の一貫性に注意すること(特にkWとW、rpmと角速度の変換など)

まとめ

本ページでは、第三種電気主任技術者試験の重要分野である「同期機(電動機・発電機)」について学習しました。同期機の基本構造から動作原理、特性、応用と制御まで、幅広く解説しています。同期機は電力系統の発電機として、また特殊な産業用電動機として重要な役割を果たしており、その特性を理解することは電気技術者にとって必須の知識です。

本ページの内容をしっかりと理解し、演習問題を繰り返し解くことで、試験での得点力向上につながります。また、実務においても同期機の選定や運用、トラブルシューティングに役立つ知識となるでしょう。

学習のポイント
同期機の学習で特に重要な点は以下の通りです:

  • 同期機の基本構造と円筒形・突極形の違いを理解する
  • 同期速度と極数、周波数の関係を把握する
  • 同期発電機の無負荷特性、外部特性、電圧調整率の意味を理解する
  • 同期電動機のV曲線と力率制御メカニズムを理解する
  • 発電機として運転する場合と電動機として運転する場合の特性の違いを比較できる
  • 並行運転の条件と同期投入の手順を理解する
  • 同期安定度の概念と安定運転の条件を理解する

次回の学習では、「変圧器」について解説します。変圧器は電力系統において電圧変換を行う重要な静止器であり、その原理と特性を理解することで、電気機器に関する知識がさらに広がります。