原子力発電は、ウランなどの原子核が分裂する際に発生する熱エネルギーを利用して電気を生み出す発電方式です。1950年代から商業利用が始まり、現在では世界の電力供給における重要な役割を担っています。
原子力発電は、化石燃料に比べて発電時のCO₂排出量が極めて少なく、気候変動対策の観点から注目されています。また、燃料であるウランは少量で大量のエネルギーを得られるため、エネルギー密度が非常に高いという特徴があります。
原子力発電所で作られた電気は、一般家庭や工場、オフィスビルなど様々な場所で使用されています。特に、安定した大量の電力供給が必要な製鉄所やアルミニウム精錬所などの重工業において重要な役割を果たしています。また、電力の安定供給を通じて、現代の情報社会を支える基盤となっています。
第三種電気主任技術者試験の電力科目において、原子力発電は重要な出題分野の一つです。特に「発電」の分野では、火力発電、水力発電と並んで頻出の内容となっています。試験では原子力発電の基本原理、原子炉の種類と特徴、安全システム、放射線管理などの基礎知識が問われます。
原子力発電について学ぶ際は、まず基本原理を理解し、次に主要な構成要素と機能、安全対策について学びます。その後、より詳細な技術的内容や運用面について理解を深めていきましょう。本ページでは、第三種電気主任技術者試験で問われる範囲を中心に解説していきます。
原子力発電の中心となるのは、ウラン235などの重い原子核が分裂する「核分裂反応」です。この反応によって大量のエネルギーが放出されます。
ウラン235の原子核に中性子が衝突すると、原子核は不安定になり分裂します。この分裂により、2〜3個の中性子が放出されると同時に、膨大なエネルギーが熱として発生します。放出された中性子が別のウラン235に衝突して次々と核分裂が起こる連鎖反応により、継続的にエネルギーを取り出すことができます。
核分裂の際に発生するエネルギーの大部分(約83%)は、分裂生成物の運動エネルギーとして現れます。残りは即発γ線や中性子の運動エネルギー、分裂生成物のβ崩壊やγ崩壊に伴うエネルギーなどの形で放出されます。
原子炉内では、核分裂によって放出される中性子の数を制御することが重要です。この制御には主に以下の要素が関わっています。
原子炉の核分裂連鎖反応の状態を表す重要な指標が「実効増倍率(keff)」です。
原子炉の運転では、通常、keffを僅かに1より大きい値(例:1.001)に調整して徐々に出力を上げ、定格出力に達したら正確に1に調整して運転を継続します。
原子力発電所では、核分裂によって発生した熱エネルギーが最終的に電気エネルギーに変換されるまでに、以下の段階を経ます。
100万kW級の原子力発電所では、原子炉で約300万kWの熱出力が発生します。熱効率は約33%のため、100万kWの電気出力が得られる一方、約200万kWの熱が冷却水を通じて環境中に放出されます。
熱効率が火力発電(約40〜45%)より低い理由は、安全性確保のため蒸気温度・圧力を低く設定していることと、プラント内での所内電力消費が大きいためです。PWRの蒸気温度は約280℃、BWRは約290℃であり、最新の石炭火力発電(約600℃)と比べると低温です。
原子炉にはいくつかの種類がありますが、日本で主に使用されているのは「軽水炉」です。軽水炉はさらに「沸騰水型原子炉(BWR)」と「加圧水型原子炉(PWR)」の2種類に大別されます。
軽水炉では、通常の水(軽水)が「冷却材」と「減速材」の二重の役割を果たしています。水は熱を効率よく取り出す優れた冷却材であると同時に、水素原子の存在により中性子を効果的に減速する性能も持っています。この二重の役割が軽水炉の特徴であり、世界中で広く採用されている理由の一つです。
BWRは日本の原子力発電所の約3分の2を占める主要な炉型です。
PWRは世界的に最も多く採用されている炉型で、日本でも約3分の1の原子力発電所で採用されています。
比較項目 | BWR(沸騰水型原子炉) | PWR(加圧水型原子炉) |
---|---|---|
サイクル方式 | 直接サイクル | 間接サイクル |
一次系圧力 | 約7MPa(70気圧) | 約15MPa(150気圧) |
冷却材の状態 | 原子炉内で沸騰 | 沸騰せず(加圧状態) |
蒸気発生器 | なし(原子炉内で直接蒸気発生) | あり(一次系と二次系の熱交換) |
制御棒の挿入方向 | 下部から挿入 | 上部から挿入 |
タービン系統 | 放射化した蒸気が流れる | 放射性物質が混入しにくい |
加圧器 | なし | あり(圧力制御用) |
タービン建屋 | 放射線管理区域 | 非管理区域 |
系統構成 | 比較的シンプル | やや複雑 |
世界各国で様々な型式の原子炉が開発・運用されています。第三種電気主任技術者試験では、軽水炉が中心ですが、以下の原子炉についても基本的な知識が問われることがあります。
原子炉は主に以下の要素で分類されます:
現在、世界で運転中の原子炉の約80%は軽水炉(PWRとBWR)で、このうちPWRが約2/3を占めています。
第三種電気主任技術者試験では、核分裂エネルギーの計算が頻出問題となっています。特に質量欠損からのエネルギー計算や、核分裂エネルギーと他のエネルギー源との比較問題が多く出題されます。
核分裂によって放出されるエネルギーを理解するためには、質量とエネルギーの等価性を示すアインシュタインの有名な方程式が基本となります。
ここで、\(E\) はエネルギー [J]、\(m\) は質量 [kg]、\(c\) は光速 [\(3.0 \times 10^8\) m/s] です。
核分裂反応では、分裂前の質量と分裂後の質量に差が生じます。この「質量欠損」がエネルギーに変換されます。ウラン235の核分裂では、質量の約0.1%がエネルギーに変換されます。
試験では以下のような計算パターンが出題されます:
問題例: 5kgのウラン燃料に含まれる3%のウラン235が全て核分裂し、0.1%の質量欠損が生じた場合に発生するエネルギーを求めよ。
解法:
\begin{align*} \text{ウラン235の質量} &= 5 \text{ kg} \times 0.03 = 0.15 \text{ kg}\\[10pt] \text{質量欠損} &= 0.15 \text{ kg} \times 0.001 = 1.5 \times 10^{-4} \text{ kg}\\[10pt] \text{発生エネルギー} &= mc^2\\[10pt] &= 1.5 \times 10^{-4} \text{ kg} \times (3 \times 10^8 \text{ m/s})^2\\[10pt] &= 1.5 \times 10^{-4} \times 9 \times 10^{16} \text{ J}\\[10pt] &= 1.35 \times 10^{13} \text{ J} \end{align*}これをkWhに換算すると:
\begin{align*} \text{発生エネルギー} &= \frac{1.35 \times 10^{13} \text{ J}}{3.6 \times 10^6 \text{ J/kWh}}\\[10pt] &= 3.75 \times 10^6 \text{ kWh} = 3,750,000 \text{ kWh} \end{align*}問題例: 1molのウラン235が全て核分裂した場合に発生するエネルギーを求めよ。ただし1個の核分裂で約200MeVのエネルギーが放出されるものとする。
解法:
\begin{align*} \text{ウラン235の原子数} &= 1 \text{ mol} \times 6.02 \times 10^{23} \text{ 個/mol}\\[10pt] &= 6.02 \times 10^{23} \text{ 個}\\[10pt] \text{全エネルギー} &= 6.02 \times 10^{23} \text{ 個} \times 200 \text{ MeV/個}\\[10pt] &= 1.204 \times 10^{26} \text{ MeV} \end{align*}これをジュールに換算すると:
\begin{align*} \text{全エネルギー} &= 1.204 \times 10^{26} \text{ MeV} \times 1.6 \times 10^{-19} \text{ J/eV} \times 10^6 \text{ eV/MeV}\\[10pt] &= 1.926 \times 10^{13} \text{ J} \end{align*}さらにkWhに換算すると:
\begin{align*} \text{全エネルギー} &= \frac{1.926 \times 10^{13} \text{ J}}{3.6 \times 10^6 \text{ J/kWh}}\\[10pt] &\approx 5.35 \times 10^6 \text{ kWh} = 5,350,000 \text{ kWh} \end{align*}問題例: 2kgのウラン燃料に含まれる4%のウラン235が核分裂し、0.1%の質量欠損が生じたときに発生するエネルギーと同量のエネルギーを、重油(発熱量40MJ/kg、密度0.9kg/L)の燃焼で得る場合に必要な重油の量[kL]を求めよ。
解法:
まず、核分裂で発生するエネルギーを計算します。
\begin{align*} \text{ウラン235の質量} &= 2 \text{ kg} \times 0.04 = 0.08 \text{ kg}\\[10pt] \text{質量欠損} &= 0.08 \text{ kg} \times 0.001 = 8 \times 10^{-5} \text{ kg}\\[10pt] \text{発生エネルギー} &= 8 \times 10^{-5} \text{ kg} \times (3 \times 10^8 \text{ m/s})^2\\[10pt] &= 8 \times 10^{-5} \times 9 \times 10^{16} \text{ J}\\[10pt] &= 7.2 \times 10^{12} \text{ J} \end{align*}次に、同量のエネルギーを発生させるために必要な重油の量を計算します。
\begin{align*} \text{重油の必要量} &= \frac{7.2 \times 10^{12} \text{ J}}{40 \times 10^6 \text{ J/kg}}\\[10pt] &= 180,000 \text{ kg} \end{align*}これを体積に換算します。
\begin{align*} \text{重油の体積} &= \frac{180,000 \text{ kg}}{0.9 \text{ kg/L}}\\[10pt] &= 200,000 \text{ L} = 200 \text{ kL} \end{align*}核エネルギー計算では以下のポイントに注意しましょう:
実際の原子力発電所では、ウラン235の濃縮度は3〜5%程度で、全てのウラン235が核分裂するわけではありません。また、熱エネルギーから電気エネルギーへの変換効率も約30〜35%程度です。試験では、このような実際の原子力発電所の効率を考慮した問題も出題される場合があります。
原子炉や使用済燃料プールで観察される神秘的な青い光(チェレンコフ光)は、原子力発電施設で見られる最も視覚的に印象的な現象の一つです。この現象は、物理学者パーヴェル・チェレンコフによって発見され、その理論的解明に貢献したイリヤ・フランクとイゴール・タムとともに1958年にノーベル物理学賞を受賞しています。
チェレンコフ光が発生する条件は以下の式で表されます:
\[v > \frac{c}{n}\]ここで、\(v\) は荷電粒子の速度、\(c\) は真空中の光速、\(n\) は媒質の屈折率です。水の屈折率は約1.33なので、荷電粒子の速度が \(v > \frac{3 \times 10^8}{1.33} \approx 2.25 \times 10^8\) m/s を超えるとチェレンコフ光が発生します。
第三種電気主任技術者試験においてチェレンコフ光の詳細が直接問われることは無いですが、原子炉の運転状態や使用済燃料の管理に関連する基礎知識として理解しておくことは有用です。特に原子力発電所での実務に携わる場合、この現象を正しく理解していることは、施設の状態を視覚的に把握する一助となります。
原子炉物理の詳細な数式は試験範囲外ですが、基本的な概念は理解しておく必要があります。
原子炉の核分裂連鎖反応を特徴づける重要なパラメータが「実効増倍率」です。これは、一つの核分裂で発生した中性子が引き起こす次の核分裂の数を表します。
原子炉の運転状態は以下のように分類されます:
原子炉の運転では、制御棒の操作などにより実効増倍率を適切に調整し、安定した出力を維持します。起動時には一時的に超臨界状態にして出力を上昇させ、定格出力に達したら臨界状態を維持します。停止時には未臨界状態にして核分裂反応を止めます。
核分裂で発生する中性子は、発生のタイミングによって「即発中性子」(核分裂と同時に発生)と「遅発中性子」(核分裂生成物の崩壊後に発生)に分けられます。遅発中性子は全体の約0.65%(ウラン235の場合)と少ないですが、原子炉の安定した制御を可能にする重要な役割を果たしています。原子炉は通常、この遅発中性子を利用して制御されています。
原子力発電所の熱効率は、投入された熱エネルギーのうち、電気エネルギーに変換される割合を表します。
ここで、\(\eta\) は熱効率 [%]、\(W\) は正味仕事(電気出力)[J]、\(Q_1\) は投入熱量 [J] です。
原子力発電所の熱効率は、一般的に火力発電所より若干低く、約30〜35%程度です。これは主に、原子炉の安全性確保のため、蒸気の温度・圧力が火力発電所より低く設定されているためです。
問題例: 熱効率が33%の原子力発電所で、電気出力100万kW(1000MW)を得るためには、どれだけの熱出力が必要か。
つまり、約3030MWの熱出力が必要です。残りの約2030MWは、冷却水などを通じて環境中に放出されます。
原子力発電所の熱効率が低い主な理由は、安全性確保のために蒸気条件(温度・圧力)を低く設定していることと、プラント内の所内電力消費が大きいことです。
原子力発電所の熱効率は、投入された熱エネルギーのうち、電気エネルギーに変換される割合を表します。
ここで、\(\eta\) は熱効率 [%]、\(W\) は正味仕事(電気出力)[J]、\(Q_1\) は投入熱量 [J] です。
原子力発電所の熱効率は、一般的に火力発電所より若干低く、約30〜35%程度です。これは主に、原子炉の安全性確保のため、蒸気の温度・圧力が火力発電所より低く設定されているためです。
熱効率が33%の原子力発電所で、電気出力100万kW(1000MW)を得るためには、どれだけの熱出力が必要でしょうか。
つまり、約3030MWの熱出力が必要です。残りの約2030MWは、冷却水などを通じて環境中に放出されます。
原子炉の熱出力 \(P\) は、核分裂率 \(R\) と1回の核分裂で発生するエネルギー \(E_f\) の積で表されます。
ここで、\(P\) は熱出力 [W]、\(R\) は核分裂率 [分裂/s]、\(E_f\) は1回の核分裂で発生するエネルギー [J/分裂] です。
ウラン235の1回の核分裂で発生するエネルギーは約200MeV(\(3.2 \times 10^{-11}\) J)です。
深層防護とは、異常の発生防止、異常の拡大防止、事故の影響緩和という三段階の安全確保策を重層的に施す考え方です。何重もの安全対策を講じることで、単一の機器の故障や人的ミスが重大事故につながらないようにします。
原子力発電所は、万が一の故障や操作ミスが起きても安全側に作用するよう設計されています。例えば、制御棒は通常、電磁石で保持されており、電源喪失時には自動的に重力で炉心に落下し、原子炉を停止させる仕組みになっています。
原子炉冷却材喪失事故(LOCA: Loss Of Coolant Accident)などの緊急時に、炉心を冷却するための装置です。複数の独立したシステムから構成され、それぞれが単独でも炉心冷却機能を確保できるよう設計されています。
外部電源喪失時にも原子炉の冷却や監視機能を維持するため、非常用ディーゼル発電機が設置されています。これらは通常、複数台が独立した系統として設置され、一台が故障しても残りで電力供給が可能なよう設計されています。
原子炉圧力容器を覆う頑丈な構造物で、万一の事故時に放射性物質が外部に漏れ出すことを防ぐ役割を持ちます。通常、厚さ数十センチメートルの鋼鉄やコンクリート製で、気密性が確保されています。
原子力発電所の安全確保の考え方として「深層防護」の概念が重要です。
深層防護とは、安全確保のために複数の独立した防護レベルを設けることで、一つの防護レベルが破られても別の防護レベルが機能するようにする考え方です。具体的には以下の5つのレベルから構成されます:
炉心溶融に代表される過酷事故(シビアアクシデント)は、第1〜第3の防護レベルが全て機能喪失した場合に発生する事象です。第4の防護レベルとして、炉心溶融後の対策(代替注水、格納容器スプレイ、フィルタベントなど)が整備されています。
放射線には主に以下の種類があり、それぞれ異なる性質と透過力を持っています。
放射線に関する主な単位は以下の通りです。
日本では、放射線業務従事者に対して、5年間で100mSv(ミリシーベルト)かつ1年間で50mSvを超えないという線量限度が法令で定められています。一般公衆に対しては、1年間で1mSvが線量限度とされています。
原子力発電所では、放射線を適切に遮蔽するために、以下のような対策が取られています。
遮蔽材としては、ガンマ線に対しては鉛や鉄、コンクリートが、中性子に対しては水や水素を多く含むポリエチレンなどが効果的です。
核燃料サイクルとは、ウラン採掘から使用済み燃料の処理・処分までの一連の流れを指します。
原子力発電所から発生する放射性廃棄物は、放射能レベルに応じて区分され、それぞれ適切な処理・処分が行われます。
以下の記述のうち、沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)の特徴について、正しいものを選びなさい。
解答:a
BWR(沸騰水型原子炉)では、原子炉内で冷却材である水が沸騰して蒸気となり、その蒸気が直接タービンを回す仕組みになっています。一方、PWR(加圧水型原子炉)では、一次冷却系統の水は高圧(約150気圧)に保たれているため沸騰せず、熱は蒸気発生器を介して二次冷却系統に伝えられます。二次冷却系統で発生した蒸気がタービンを回します。
この違いにより、BWRはシンプルな構造である反面、放射化した水蒸気がタービン系に流れるため、タービン建屋も放射線管理区域となります。PWRは構造が複雑になる反面、一次系と二次系が分離されているため、タービン系統に放射性物質が混入しにくいという特徴があります。
2 kg のウラン燃料に 4.2 % 含まれるウラン 235 が核分裂し、0.1 % の質量欠損が生じたときに発生するエネルギーと同量のエネルギーを、重油の燃焼で得る場合に必要な重油の量 [kL] として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
解答:(3) 200
与えられた条件から計算していきます。
\begin{align*} \text{ウラン燃料中のウラン235の質量} &= 2 \text{ kg} \times 0.042 = 0.084 \text{ kg}\\[10pt] \end{align*} ウラン235が核分裂するとき、質量の0.1%が質量欠損となりエネルギーに変換されます。 \begin{align*} \text{質量欠損量} &= 0.084 \text{ kg} \times 0.001 = 8.4 \times 10^{-5} \text{ kg}\\[10pt] \end{align*} アインシュタインの質量エネルギー等価の法則(\(E = mc^2\))より、この質量欠損分がエネルギーに変換されます。 \begin{align*} \text{発生エネルギー} &= mc^2\\[10pt] &= 8.4 \times 10^{-5} \text{ kg} \times (3 \times 10^8 \text{ m/s})^2\\[10pt] &= 8.4 \times 10^{-5} \times 9 \times 10^{16} \text{ J}\\[10pt] &= 7.56 \times 10^{12} \text{ J} \end{align*} 重油の発熱量は約40 MJ/kgで、密度は約0.9 kg/Lです。これを使って、同量のエネルギーを得るために必要な重油の量を計算します。 \begin{align*} \text{重油の必要量 [kg]} &= \frac{7.56 \times 10^{12} \text{ J}}{40 \times 10^6 \text{ J/kg}}\\[10pt] &= 189,000 \text{ kg} \end{align*} 重油の密度で体積に換算します。 \begin{align*} \text{重油の必要量 [kL]} &= \frac{189,000 \text{ kg}}{0.9 \text{ kg/L}} \times \frac{1 \text{ kL}}{1000 \text{ L}}\\[10pt] &= 210 \text{ kL} \end{align*}したがって、必要な重油の量は約210 kLとなり、選択肢の中では「200」が最も近いです。
この計算から、わずか84gのウラン235の核分裂で得られるエネルギーは、約200kLもの重油を燃焼させて得られるエネルギーに匹敵することがわかります。これは原子力発電のエネルギー密度の高さを示しています。
原子力発電所の安全対策に関する以下の記述のうち、誤っているものを選びなさい。
解答:d
格納容器の主な目的は、事故時に放射性物質が外部環境に漏れ出すことを防ぐことです(閉じ込め機能)。放射線の遮蔽は重要な機能の一つですが、主目的ではありません。また、格納容器の材料としては、鉄筋コンクリートや鋼板が使用されており、鉛が多く使用されているわけではありません。
正しい記述は以下の通りです:
放射線の種類とその遮蔽方法に関する以下の組み合わせのうち、最も適切なものを選びなさい。
解答:c
放射線の種類によって透過力が異なるため、適切な遮蔽材料も異なります。
したがって、γ線とコンクリートや鉛の組み合わせが最も適切です。
原子力発電所の熱効率が33%であるとき、電気出力100万kWを得るためには何kWの熱出力が必要か。
解答:
熱効率 \(\eta\) は、電気出力 \(P_e\) を熱出力 \(P_t\) で割った値として定義されます。
\begin{align*} \eta &= \frac{P_e}{P_t}\\[10pt] 0.33 &= \frac{100 \text{ 万kW}}{P_t}\\[10pt] P_t &= \frac{100 \text{ 万kW}}{0.33}\\[10pt] &\approx 303 \text{ 万kW} \end{align*}したがって、電気出力100万kWを得るためには、約303万kWの熱出力が必要です。残りの約203万kWは、主に冷却水を通じて環境中(海水や冷却塔など)に放出されます。
この熱効率は火力発電所(約40〜45%)と比べるとやや低いですが、これは原子炉の安全性確保のため、蒸気の温度・圧力が火力発電所より低く設定されているためです。
第三種電気主任技術者試験の電力科目では、原子力発電に関する基礎的な知識や原理の理解が求められます。特に以下の点が重要です:
試験では、これらの知識を基に、原子力発電の特徴や安全対策、放射線管理などについて問われることが多いです。原子力発電は、火力発電や水力発電と並ぶ重要な発電方式として、基本的な理解が必要とされます。
本単元で学んだ原子力発電の知識は、以下の単元とも関連しています:
次の学習単元では、これらの関連分野について理解を深めていきましょう。
原子力発電を学ぶ上で重要なのは、基本原理の正確な理解と、安全性確保の考え方です。単に公式や数値を暗記するのではなく、なぜそのような構造や仕組みが採用されているのか、その背景にある物理的・工学的な理由を理解することが大切です。
また、実務面では、原子力発電所の運転・保守における電気主任技術者の役割を意識しながら学習を進めると、より深い理解につながります。