再生可能エネルギー(Renewable Energy)とは、自然界に存在する枯渇しないエネルギー源から得られるエネルギーのことです。太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然のサイクルによって絶えず補充されるエネルギー源を利用します。
近年、地球温暖化対策として国際的にカーボンニュートラルの実現が求められており、電力分野における再生可能エネルギーの導入拡大は必須となっています。日本でも2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーを主力電源として位置づけています。
再生可能エネルギーは、AI技術を活用したスマートグリッド(次世代電力網)と組み合わせることで、需要と供給を最適化し、電力系統の安定性を向上させています。家庭の太陽光発電で余った電力を蓄電池に貯めたり、電力会社に売電したりする仕組みが身近な例です。
第三種電気主任技術者試験において、再生可能エネルギーは主に電力科目で出題されます:
近年の電力科目では、再生可能エネルギーに関する出題が増加傾向にあります。特に以下の点が重要視されています:
電力科目における再生可能エネルギー分野の学習では、以下の点に重点を置いてください:
再生可能エネルギーの学習を効果的に進めるために、以下のステップで取り組むことをお勧めします:
本学習ページでは、これらの学習方法を踏まえて、理論から実践まで体系的に学習できるよう構成しています。各セクションを順番に学習し、最後の演習問題で理解度を確認してください。
再生可能エネルギーとは、自然界において短期間で再生され、実質的に枯渇することのないエネルギー源から得られるエネルギーです。化石燃料(石炭、石油、天然ガス)や核燃料(ウラン)とは異なり、持続的に利用可能な特徴を持ちます。
エネルギー系統 | 発電方式・技術 | 原理・特徴 |
---|---|---|
太陽エネルギー系 | 太陽光発電 | 光起電力効果 |
太陽熱発電 | 集光・蒸気タービン | |
風力エネルギー系 | 陸上風力発電 | 陸上設置型風車 |
洋上風力発電 | 海上設置型風車 | |
水力エネルギー系 | 大規模水力発電 | ダム式発電 |
小水力発電 | 河川流水利用 | |
波力・潮力発電 | 海洋エネルギー利用 | |
地熱エネルギー系 | 地熱発電 | 蒸気タービン方式 |
地中熱利用 | ヒートポンプ方式 | |
バイオマスエネルギー系 | 木質バイオマス発電 | 木材燃焼発電 |
メタン発酵発電 | バイオガス利用 | |
バイオ燃料 | エタノール・BDF | |
化学エネルギー系 | 燃料電池 | 水素・酸素反応 |
再生可能エネルギー発電では、自然エネルギーを電気エネルギーに変換する過程で、様々な物理法則が適用されます。
原理:光起電力効果(photovoltaic effect)
太陽光(光子)がp-n接合の半導体に入射すると、電子-正孔対が生成され、内蔵電界により電流が流れます。
変換過程:光エネルギー → 電気エネルギー(直流)→ 交流(インバータ)
原理:風の運動エネルギーを回転運動に変換
風がブレード(翼)に作用する揚力により回転子が回転し、発電機で電気に変換されます。
変換過程:風の運動エネルギー → 回転運動エネルギー → 電気エネルギー
原理:熱エネルギーによる蒸気生成とタービン回転
地熱や燃焼熱により水を蒸気化し、蒸気タービンを回転させて発電します。
変換過程:熱エネルギー → 蒸気の運動エネルギー → 回転運動エネルギー → 電気エネルギー
原理:電気化学反応による直接発電
水素と酸素の化学反応により、熱を経由せずに直接電気エネルギーを取り出します。
変換過程:化学エネルギー → 電気エネルギー(直流)
各再生可能エネルギーの理論最大効率と実用効率:
系統連系(Grid Connection)とは、再生可能エネルギー発電設備を既存の電力系統(送配電網)に接続することです。安定した電力供給のために重要な技術です。
太陽光発電や風力発電は気象条件により出力が変動するため、以下の対策が必要です:
インバータを使用する発電設備では、以下の電力品質問題に注意が必要です:
分散型電源(Distributed Generation, DG)は、需要地近くに設置された小規模な発電設備の総称です。
分散型電源の大量導入には、IT技術を活用したスマートグリッド(次世代電力網)が不可欠です:
これらの基礎概念を理解することで、各再生可能エネルギー技術の詳細な理論と実践的な応用について、より深く学習することができます。
風力発電は、風の運動エネルギーを回転運動に変換し、さらに電気エネルギーに変換する発電方式です。
単位時間当たりに通過する風の体積:
\( V = A \times v \) [m³/s]
単位時間当たりに通過する風の質量:
\( m = \rho \times A \times v \) [kg/s]
風の持つ出力(パワー):
\( P = \frac{1}{2} \times \rho \times A \times v^3 \) [W]
ここで、
なぜ3枚翼が主流?
効率、振動特性、コストのバランスが最適で、現在の大型風車の標準となっています。
太陽光発電は、太陽電池(フォトボルタイック)の光起電力効果を利用して、太陽光を直接電気エネルギーに変換する発電方式です。
太陽光発電では、日射条件に応じて常に最大出力点で動作させるMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御が重要です。これにより発電効率を最大化できます。
バイオマス発電は、木材、農業廃棄物、食品廃棄物などの有機物を燃料として利用する発電方式です。
地熱発電は、地下の高温の地熱流体(蒸気や熱水)を利用してタービンを回転させる発電方式です。
日本は世界第3位の地熱資源量を保有していますが、開発量は世界第10位程度です。国立公園内の規制緩和や温泉との共生技術の開発により、今後の拡大が期待されています。
燃料電池は、水素と酸素の電気化学反応により、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電装置です。
燃料電池は化学エネルギーを直接電気に変換するため、熱機関のカルノー効率の制約を受けません。理論効率は80%以上と非常に高く、実用効率も従来の発電方式を上回ります。
分散型電源は、需要地近くに設置された小規模な発電設備の総称で、従来の大規模集中型電源とは異なる特徴を持ちます。
これらの発電技術の理解により、各再生可能エネルギーの特性を把握し、適切な導入計画や運用方法を検討することができます。第三種電気主任技術者試験では、これらの基本原理と特徴を理解しておくことが重要です。
構成要素 | 機能・役割 | 詳細・特徴 |
---|---|---|
ロータ(回転翼) | 風のエネルギーを回転運動に変換 |
|
ナセル | 発電機、制御装置等を収納 |
|
タワー | ロータとナセルを支持する鉄塔 |
|
基礎 | タワーを地面に固定する構造物 |
|
電気設備 | 発電した電力を系統に送電 |
|
制御システム | 風車全体の運転制御 |
|
青山高原風力発電所(三重県):
洋上風力は陸上に比べて以下の利点があります:
構成機器 | 基本機能 | 詳細・特徴 |
---|---|---|
太陽電池モジュール | 太陽光を直流電力に変換 |
|
パワーコンディショナ(PCS) | 直流を交流に変換 |
|
接続箱 | 複数のモジュールを接続 |
|
監視装置 | 発電状況の監視・制御 |
|
系統連系装置 | 電力系統との接続 |
|
架台・設置構造 | モジュールの設置・支持 |
|
扇島太陽光発電所(神奈川県川崎市):
農地の上部空間に太陽光発電設備を設置し、農業と発電を両立させる技術です。
木材や木質廃材を燃料とする発電方式で、最も普及しているバイオマス発電です。
苫小牧バイオマス発電所(北海道):
有機性廃棄物をメタン発酵させて得られるバイオガスによる発電です。
温泉地等での小規模な地熱利用として注目されています。
基本仕様
詳細技術仕様
基本仕様
詳細技術仕様
基本仕様
詳細技術仕様
基本仕様
詳細技術仕様
基本仕様
詳細技術仕様
水素を燃料とする次世代自動車として実用化が進んでいます。
韓国 富川燃料電池発電所:
課題:太陽光・風力発電は気象条件により出力が変動
対策技術:
課題:大量導入時の電力系統への影響
対策技術:
これらの技術開発により、再生可能エネルギーの更なる普及拡大と、持続可能な社会の実現が期待されています。
問題1:再生可能エネルギーの基本特性
再生可能エネルギーの特徴として正しいものを次の中からすべて選びなさい。
解答:a, b, e
解説:
問題2:風力発電の基本原理
風力発電に関する記述として正しいものはどれか。
解答:a
解説:
問題3:太陽光発電の特性
太陽電池の特性パラメータに関する説明として適切でないものはどれか。
解答:a
解説:
問題4:燃料電池の基本
燃料電池に関する記述として正しいものはどれか。
解答:c
解説:
問題5
分散型電源の系統連系に関する記述として、適切でないものはどれか。
解答:d
解説:
問題6
再生可能エネルギーの特徴と課題に関する記述として、最も適切なものはどれか。
解答:b
解説:
問題7
燃料電池に関する記述として、正しいものはどれか。
解答:c
解説:
問題8
太陽光発電システムの系統連系に関する記述として、適切でないものはどれか。
解答:d
解説:
問題9
再生可能エネルギーの大量導入が電力系統に与える影響と対策に関する記述として、最も適切なものはどれか。
解答:b
解説:
問題10
エネルギー貯蔵技術と再生可能エネルギーの組み合わせに関する記述として、適切でないものはどれか。
解答:d
解説:
演習問題の学習ポイント:
電圧・周波数の維持:
高調波対策:
事故時の適切な解列動作:
予測技術:
蓄電技術:
需給調整:
系統安定度の維持:
多数の小規模電源の統合管理:
第三種電気主任技術者試験での重要事項:
再生可能エネルギーの学習を深めるために、以下の関連分野も併せて学習することを推奨します:
技術的な理解に加えて、再生可能エネルギーを社会システムとして捉える視点も重要です:
再生可能エネルギー分野は急速に発展しており、以下の技術革新が期待されています:
これらの技術動向を継続的に学習し、持続可能な社会の実現に向けた電気主任技術者としての専門性を高めていくことが重要です。
継続的な学習により、再生可能エネルギー分野の専門家として活躍できる知識と技能を身につけていきましょう。