【第三種電気主任技術者試験】再生利用型新エネルギー完全攻略 | 風力・太陽光・地熱・バイオマス・燃料電池の基礎から系統連系まで

1. イントロダクション

1.1 再生可能エネルギーの概要と重要性

再生可能エネルギー(Renewable Energy)とは、自然界に存在する枯渇しないエネルギー源から得られるエネルギーのことです。太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然のサイクルによって絶えず補充されるエネルギー源を利用します。

複数の再生可能エネルギー設備
イメージ図: 複数の再生可能エネルギー設備

再生可能エネルギーの重要性

  • 環境負荷の低減:CO₂排出量の大幅な削減
  • エネルギー安全保障:化石燃料依存からの脱却
  • 持続可能性:将来世代への責任ある電力供給
  • 技術革新:新たな産業創出と雇用機会の拡大

近年、地球温暖化対策として国際的にカーボンニュートラルの実現が求められており、電力分野における再生可能エネルギーの導入拡大は必須となっています。日本でも2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーを主力電源として位置づけています。

1.2 日常生活・産業での応用例

日常生活での応用

  • 住宅用太陽光発電:屋根に設置された太陽光パネルによる自家発電
  • 小型風力発電:街灯や看板の電源として活用
  • 燃料電池自動車:水素を燃料とする次世代自動車
  • 家庭用燃料電池:エネファームによる電力・熱の同時供給

産業分野での応用

  • メガソーラー:大規模太陽光発電所による電力供給
  • 洋上風力発電:海上に設置される大型風力発電施設
  • バイオマス発電所:木質チップや農業廃棄物を燃料とする発電
  • 地熱発電所:地下の熱エネルギーを利用した安定電源
  • 工場の自家発電:製造業における電力コスト削減と安定供給

具体例:スマートグリッドとの連携

再生可能エネルギーは、AI技術を活用したスマートグリッド(次世代電力網)と組み合わせることで、需要と供給を最適化し、電力系統の安定性を向上させています。家庭の太陽光発電で余った電力を蓄電池に貯めたり、電力会社に売電したりする仕組みが身近な例です。

1.3 第三種電気主任技術者試験における位置づけ

第三種電気主任技術者試験において、再生可能エネルギーは主に電力科目で出題されます:

電力科目での出題内容

  • 各種再生可能エネルギー発電方式の特徴と比較
    • 太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電の原理と特徴
    • 各発電方式の長所・短所、適用分野
    • 設備利用率、発電効率などの性能指標
  • 系統連系技術と電力品質の問題
    • 分散型電源の系統連系時の技術的課題
    • 電圧上昇、高調波、単独運転防止
    • 系統保護と保護協調
  • 分散型電源の導入効果と課題
    • 送電損失低減、供給信頼度向上などの効果
    • 出力変動、制御の複雑化などの課題
    • マイクログリッド、スマートグリッドの概念
  • 電力系統への影響と対策技術
    • 大量導入時の系統運用への影響
    • 需給調整、周波数制御への影響
    • 蓄電技術、出力制御技術

試験での出題傾向と対策

近年の電力科目では、再生可能エネルギーに関する出題が増加傾向にあります。特に以下の点が重要視されています:

  • 各発電方式の発電原理と特徴の理解
    • 光起電力効果、風力エネルギーの利用、地熱資源の活用など
    • 各方式の適用条件と制約事項
  • 系統連系時の技術的課題
    • 電圧上昇問題、高調波対策、保護協調
    • 単独運転防止、系統保護リレーの動作
  • 電力変換技術の基礎知識
    • インバータの役割と動作原理
    • パワーコンディショナの機能
  • 環境性・経済性の評価
    • CO₂削減効果、ライフサイクルアセスメント
    • 発電コスト、投資回収期間
  • 最新の政策・技術動向
    • FIT制度、RE100などの政策動向
    • 蓄電技術、スマートグリッド技術

学習のポイント

電力科目における再生可能エネルギー分野の学習では、以下の点に重点を置いてください:

  • 概念的理解:複雑な計算よりも、原理と特徴の理解を重視
  • 比較学習:各発電方式の長所・短所を整理して比較
  • 系統技術:電力系統への影響と対策技術の基本概念
  • 実用知識:実際の運用における課題と解決策
  • 時事問題:最新の技術動向と政策動向の把握

1.4 学習の進め方

再生可能エネルギーの学習を効果的に進めるために、以下のステップで取り組むことをお勧めします:

推奨学習ステップ

  1. 基礎原理の理解:各発電方式のエネルギー変換原理を物理的に理解する
  2. システム構成の把握:実際の発電システムの構成要素を学ぶ
  3. 系統連系技術:電力系統との接続技術と課題を理解する
  4. 実務知識の習得:設計・運用・保守に関する実践的知識を身につける

効果的な学習方法

  • 比較学習:各発電方式の特徴を表にまとめて比較する
  • 時事情報の収集:最新の技術動向や政策動向を把握する
  • 過去問題の分析:出題傾向を把握し重点項目を特定する

本学習ページでは、これらの学習方法を踏まえて、理論から実践まで体系的に学習できるよう構成しています。各セクションを順番に学習し、最後の演習問題で理解度を確認してください。

2. 基礎概念

2.1 再生可能エネルギーの定義と分類

定義

再生可能エネルギーとは、自然界において短期間で再生され、実質的に枯渇することのないエネルギー源から得られるエネルギーです。化石燃料(石炭、石油、天然ガス)や核燃料(ウラン)とは異なり、持続的に利用可能な特徴を持ちます。

再生可能エネルギーの特徴

  • 持続可能性:資源が枯渇しない
  • 環境親和性:CO₂排出量が少ない
  • 分散性:地域に分散して存在
  • 変動性:自然条件により出力が変動
  • 希薄性:エネルギー密度が低い

分類

エネルギー系統 発電方式・技術 原理・特徴
太陽エネルギー系 太陽光発電 光起電力効果
太陽熱発電 集光・蒸気タービン
風力エネルギー系 陸上風力発電 陸上設置型風車
洋上風力発電 海上設置型風車
水力エネルギー系 大規模水力発電 ダム式発電
小水力発電 河川流水利用
波力・潮力発電 海洋エネルギー利用
地熱エネルギー系 地熱発電 蒸気タービン方式
地中熱利用 ヒートポンプ方式
バイオマスエネルギー系 木質バイオマス発電 木材燃焼発電
メタン発酵発電 バイオガス利用
バイオ燃料 エタノール・BDF
化学エネルギー系 燃料電池 水素・酸素反応

2.2 エネルギー変換の基本原理

再生可能エネルギー発電では、自然エネルギーを電気エネルギーに変換する過程で、様々な物理法則が適用されます。

主要なエネルギー変換プロセス

1. 光電変換(太陽光発電)

原理:光起電力効果(photovoltaic effect)

太陽光(光子)がp-n接合の半導体に入射すると、電子-正孔対が生成され、内蔵電界により電流が流れます。

変換過程:光エネルギー → 電気エネルギー(直流)→ 交流(インバータ)

2. 運動エネルギー変換(風力発電)

原理:風の運動エネルギーを回転運動に変換

風がブレード(翼)に作用する揚力により回転子が回転し、発電機で電気に変換されます。

変換過程:風の運動エネルギー → 回転運動エネルギー → 電気エネルギー

3. 熱エネルギー変換(地熱・バイオマス発電)

原理:熱エネルギーによる蒸気生成とタービン回転

地熱や燃焼熱により水を蒸気化し、蒸気タービンを回転させて発電します。

変換過程:熱エネルギー → 蒸気の運動エネルギー → 回転運動エネルギー → 電気エネルギー

4. 化学エネルギー変換(燃料電池)

原理:電気化学反応による直接発電

水素と酸素の化学反応により、熱を経由せずに直接電気エネルギーを取り出します。

変換過程:化学エネルギー → 電気エネルギー(直流)

エネルギー変換効率

各再生可能エネルギーの理論最大効率と実用効率:

  • 太陽光発電:理論限界約33%(単接合)、実用効率15-22%
  • 風力発電:理論限界59.3%(ベッツ限界)、実用効率35-45%
  • 地熱発電:理論効率約15-20%、実用効率10-15%
  • 燃料電池:理論効率約83%、実用効率40-60%

2.3 系統連系の基本概念

系統連系(Grid Connection)とは、再生可能エネルギー発電設備を既存の電力系統(送配電網)に接続することです。安定した電力供給のために重要な技術です。

系統連系の基本要件

  • 電圧・周波数の適合:系統電圧・周波数との整合
  • 電力品質の確保:高調波・電圧変動の抑制
  • 保護協調:事故時の適切な遮断動作
  • 同期運転:系統との位相同期
  • 出力変動の制御:急激な出力変化の抑制

系統連系の技術的課題

1. 出力変動への対応

太陽光発電や風力発電は気象条件により出力が変動するため、以下の対策が必要です:

  • 予測技術:気象予報による発電量予測
  • 蓄電技術:余剰電力の貯蔵と不足時の供給
  • 需給調整:他の発電機による出力調整
  • 広域運用:地域間の電力融通
2. 電力品質の維持

インバータを使用する発電設備では、以下の電力品質問題に注意が必要です:

  • 高調波:スイッチング動作による高調波発生
  • 電圧変動:出力変動による電圧変化
  • 無効電力:力率改善の必要性

分散型電源の概念

分散型電源(Distributed Generation, DG)は、需要地近くに設置された小規模な発電設備の総称です。

分散型電源の特徴
  • 設置場所:需要地近接(配電系統レベル)
  • 規模:数kW~数十MW程度
  • 技術:再生可能エネルギー、コージェネレーション等
  • 効果:送電損失低減、電力供給信頼度向上
  • 課題:系統制御の複雑化、電力品質への影響
スマートグリッドとの関係

分散型電源の大量導入には、IT技術を活用したスマートグリッド(次世代電力網)が不可欠です:

  • 双方向通信:発電設備と系統運用者間の情報交換
  • 自動制御:需給バランスの自動調整
  • 最適運用:AI技術による効率的な電力配分
  • デマンドレスポンス:需要側の能動的な電力使用制御

これらの基礎概念を理解することで、各再生可能エネルギー技術の詳細な理論と実践的な応用について、より深く学習することができます。

3.1 風力発電の概要と重要ポイント

風力発電の基本原理

風力発電は、風の運動エネルギーを回転運動に変換し、さらに電気エネルギーに変換する発電方式です。

複数の再生可能エネルギー設備
イメージ図: 風力発電に使用される風車

風力発電の出力と風速の関係

風力発電の出力計算

単位時間当たりに通過する風の体積:

\( V = A \times v \) [m³/s]

単位時間当たりに通過する風の質量:

\( m = \rho \times A \times v \) [kg/s]

風の持つ出力(パワー):

\( P = \frac{1}{2} \times \rho \times A \times v^3 \) [W]

ここで、

  • \( A \):風車の受風面積 [m²]
  • \( v \):風速 [m/s]
  • \( \rho \):空気密度 [kg/m³](標準状態で約1.2 kg/m³)
風力発電の重要ポイント
  • 風速の影響:発電量は風速の3乗に比例するため、風速が2倍になると発電量は8倍になる
  • ベッツ限界:理論上の最大効率は約59%に制限される(実際は35-45%程度)
  • 風車の大型化:受風面積が大きいほど発電量が増加する
  • 風況の重要性:年間を通じて安定した風が得られる立地が重要
  • 出力変動:風速により発電量が大幅に左右されるため、安定した強い風が必要

風車の種類と特徴

回転軸による分類
  • 水平軸風車(HAWT: Horizontal Axis Wind Turbine)
    水平軸風車
    イメージ図: 水平軸風車
    • 回転軸が水平で、風向きに対して垂直に設置
    • 現在の主流タイプ(大型風力発電所で使用)
    • 高効率で大出力が可能
    • 風向きに応じてナセルが回転(ヨー制御)
  • 垂直軸風車(VAWT: Vertical Axis Wind Turbine)
    垂直軸風車
    イメージ図: 垂直軸風車
    • 回転軸が垂直で、風向きに関係なく回転
    • サボニウス型、ダリウス型などがある
    • 風向きによらず発電可能
    • 効率は水平軸より劣るが、小型用途で使用
ブレード枚数による分類
  • 3枚翼:最も一般的、効率と安定性のバランスが良い
  • 2枚翼:材料費削減可能だが振動が大きい
  • 多翼:低風速での起動性能が良いが高速回転に不向き

なぜ3枚翼が主流?
効率、振動特性、コストのバランスが最適で、現在の大型風車の標準となっています。

風力発電機の種類

風力発電で使用される発電機
  • 同期発電機:励磁装置が必要で構造が複雑だが、単独運転や力率調整が可能
  • 誘導発電機:構造が簡単で保守性が良い、大型風力発電機でよく使用
  • 永久磁石式発電機:励磁電力が不要で効率が高い

風力発電の特徴

利点
  • 燃料費が不要で運転コストが安い
  • CO₂排出量が非常に少ない(発電時はゼロエミッション)
  • 設備の拡張が比較的容易
  • 洋上では陸上より強い風が利用可能
  • 離島などのディーゼル発電の代替として有効
課題
  • 風況により出力が大きく変動する
  • 騒音や景観への影響(住宅地からの距離確保が必要)
  • バードストライク(鳥類の衝突)
  • 落雷対策が必要
  • 翼の騒音低減のための形状工夫が必要
日本の風力発電の現状
  • 適地:秋田県日本海側など、安定して強い風が吹く地域
  • 離島での活用:海に近く風が強い離島は風力発電に適している
  • 設備利用率:通常20-30%程度(風が常に吹くわけではないため)
  • 年間風況データ:発電量予測には長期間の風況分析が重要
試験での重要ポイント
  • 出力は風速の3乗に比例:風速の影響が非常に大きい
  • CO₂を排出しない再生可能エネルギー
  • 出力変動が大きい:風速に大幅に左右される
  • 騒音問題:住宅地からの距離確保が必要
  • 発電機の種類:同期発電機、誘導発電機、永久磁石式発電機
  • 離島での有効性:ディーゼル発電の重油使用量減らすことが可能

3.2 太陽光発電の概要と重要ポイント

メガソーラー発電所
イメージ図: メガソーラー発電所

太陽光発電の基本原理

太陽光発電は、太陽電池(フォトボルタイック)の光起電力効果を利用して、太陽光を直接電気エネルギーに変換する発電方式です。

太陽光発電の重要ポイント
  • 光起電力効果:p-n接合の半導体に光が当たると電流が流れる現象
  • 直流発電:太陽電池は直流を発生するため、系統連系にはインバータが必要
  • 日射量の影響:発電量は日射強度に比例する
  • 温度特性:温度が上がると出力が低下する

太陽電池の主要特性

重要な特性値
  • 開放電圧:太陽電池を開放したときの端子電圧
  • 短絡電流:太陽電池を短絡したときに流れる電流
  • 最大出力点:電力が最大となる動作点
  • 変換効率:入射光エネルギーに対する電気出力の比率
  • 充填因子:太陽電池の品質を表す指標

太陽光発電の特徴

利点
  • 燃料不要で保守が比較的簡単
  • 設置場所の制約が少ない
  • 騒音や振動がない
  • モジュール化により規模の調整が容易
課題
  • 夜間は発電できない
  • 天候により出力が変動する
  • 初期設備費が高い
  • 設置面積が大きい
MPPT制御の重要性

太陽光発電では、日射条件に応じて常に最大出力点で動作させるMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御が重要です。これにより発電効率を最大化できます。

3.3 バイオマス発電の概要と重要ポイント

バイオマス発電所
イメージ図: バイオマス発電所

バイオマス発電の基本原理

バイオマス発電は、木材、農業廃棄物、食品廃棄物などの有機物を燃料として利用する発電方式です。

バイオマス発電の重要ポイント
  • カーボンニュートラル:植物が成長時に吸収したCO₂と燃焼時の排出CO₂が相殺
  • 多様な燃料:木質、農業系、廃棄物系など様々なバイオマスが利用可能
  • 安定電源:燃料があれば24時間連続運転が可能
  • 地域活性化:地域の廃棄物や未利用資源の活用

バイオマス燃料の種類と特徴

主要なバイオマス燃料
  • 木質系:間伐材、製材廃材、木質チップ・ペレット
  • 農業系:稲わら、もみ殻、麦わら
  • 畜産系:牛・豚・鶏の糞尿(メタン発酵)
  • 廃棄物系:食品廃棄物、下水汚泥、建設廃木材

発電方式の分類

主な発電方式
  • 直接燃焼:バイオマスを直接燃焼してボイラーで蒸気を発生
  • ガス化:バイオマスを部分燃焼させて可燃ガスを生成
  • メタン発酵:有機物を嫌気発酵させてメタンガスを生成
  • 廃棄物発電:廃棄物処理と発電を同時に行う

バイオマス発電の特徴

利点
  • 廃棄物の有効活用
  • 地域経済の活性化
  • 安定した電力供給が可能
  • 既存の火力発電技術が応用可能
課題
  • 燃料の安定確保
  • 収集・運搬コストの高さ
  • 燃料の品質管理
  • 灰の処理問題

3.4 地熱発電の概要と重要ポイント

地熱発電所
イメージ図: 地熱発電所

地熱発電の基本原理

地熱発電は、地下の高温の地熱流体(蒸気や熱水)を利用してタービンを回転させる発電方式です。

地熱発電の重要ポイント
  • 地熱資源:地下の熱源(マグマ、高温岩体)を利用
  • 安定性:天候に左右されず24時間安定運転が可能
  • 高設備利用率:80%以上の高い設備利用率を実現
  • 立地制約:地熱資源のある特定地域に限定される

地熱発電方式の分類

主要な発電方式
  • フラッシュサイクル:
    • シングルフラッシュ:熱水を1回減圧して蒸気化
    • ダブルフラッシュ:2段階の減圧で効率向上
  • バイナリーサイクル:
    • 低沸点作動流体を使用
    • 比較的低温の地熱でも発電可能
    • 地熱流体を直接タービンに送らない

地熱発電の特徴

利点
  • 天候に左右されない安定電源
  • 高い設備利用率
  • CO₂排出量が非常に少ない
  • 燃料費が不要
課題
  • 開発可能地域が限定的
  • 初期開発費が高額
  • 温泉への影響懸念
  • 硫化水素等の対策が必要
日本の地熱発電の可能性

日本は世界第3位の地熱資源量を保有していますが、開発量は世界第10位程度です。国立公園内の規制緩和や温泉との共生技術の開発により、今後の拡大が期待されています。

3.5 燃料電池の概要と重要ポイント

燃料電池
イメージ図: 燃料電池

燃料電池の基本原理

燃料電池は、水素と酸素の電気化学反応により、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電装置です。

燃料電池の基本反応
  • アノード(負極):水素が電子を放出してプロトンになる
  • カソード(正極):酸素がプロトンと電子を受け取り水になる
  • 全体反応:水素 + 酸素 → 水 + 電気 + 熱
  • 排出物:水のみで有害物質は発生しない

燃料電池の種類と特徴

主要な燃料電池の分類
  • 固体高分子形(PEFC):
    • 動作温度:60-80℃
    • 用途:家庭用、自動車用
    • 特徴:常温起動、小型軽量
  • 溶融炭酸塩形(MCFC):
    • 動作温度:約650℃
    • 用途:定置用発電
    • 特徴:高効率、排熱利用可能
  • 固体酸化物形(SOFC):
    • 動作温度:700-1000℃
    • 用途:定置用発電
    • 特徴:最高効率、多様な燃料対応

燃料電池の特徴

利点
  • 高い発電効率(40-60%)
  • 排出物は水のみ
  • 騒音・振動が少ない
  • 排熱の有効利用が可能
課題
  • 水素の製造・貯蔵・輸送コスト
  • 初期設備費が高い
  • 水素インフラの整備が必要
  • 触媒の劣化対策
燃料電池の効率性

燃料電池は化学エネルギーを直接電気に変換するため、熱機関のカルノー効率の制約を受けません。理論効率は80%以上と非常に高く、実用効率も従来の発電方式を上回ります。

3.6 分散型電源の概要と重要ポイント

分散型電源の基本概念

分散型電源は、需要地近くに設置された小規模な発電設備の総称で、従来の大規模集中型電源とは異なる特徴を持ちます。

分散型電源の重要ポイント
  • 設置場所:需要地近く(配電系統レベル)
  • 規模:数kW~数十MW程度
  • 技術:再生可能エネルギー、コージェネレーション等
  • 系統連系:配電線に直接接続

分散型電源の効果と課題

期待される効果
  • 送電損失の低減:需要地近くで発電するため送電距離が短い
  • 電力供給信頼度の向上:複数の電源による供給安定性
  • 環境負荷の低減:再生可能エネルギーの活用
  • 地域経済の活性化:地域資源の有効活用
技術的課題
  • 系統制御の複雑化:多数の小規模電源の制御
  • 電力品質の維持:電圧変動、高調波対策
  • 保護協調:事故時の適切な遮断
  • 出力変動対策:需給バランスの維持

系統連系時の重要事項

系統連系の技術要件
  • 電圧上昇対策:逆潮流による配電線電圧の上昇
  • 単独運転防止:系統停電時の安全確保
  • 高調波対策:インバータによる高調波発生の抑制
  • 周波数変動対策:系統周波数への影響軽減

スマートグリッドとの関係

次世代電力網での役割
  • 双方向通信:電源と系統間の情報交換
  • 自動制御:需給バランスの自動調整
  • 最適運用:AI技術による効率的運用
  • 需要制御:デマンドレスポンスとの連携

これらの発電技術の理解により、各再生可能エネルギーの特性を把握し、適切な導入計画や運用方法を検討することができます。第三種電気主任技術者試験では、これらの基本原理と特徴を理解しておくことが重要です。

4. 応用と実例

4.1 風力発電の実際の設備と応用

風力発電機の構造

構成要素 機能・役割 詳細・特徴
ロータ(回転翼) 風のエネルギーを回転運動に変換
  • ブレード:3枚翼が主流、翼の形状で効率が決まる
  • ハブ:ブレードを固定する中心部
  • ピッチ制御:風向・風速に応じてブレード角度を調整
  • 直径:大型化により受風面積増加、100m超も
  • 材質:軽量で強度のあるFRP(繊維強化プラスチック)
ナセル 発電機、制御装置等を収納
  • 発電機:同期発電機、誘導発電機、永久磁石式
  • 増速機(ギアボックス):低速回転を高速回転に変換
  • ヨー機構:風向きに応じてナセルを回転
  • 制御装置:運転制御、保護制御を行う
  • 変圧器:発電電圧を送電電圧に昇圧
  • ブレーキ装置:緊急時や保守時の停止
タワー ロータとナセルを支持する鉄塔
  • 高さ:80~120m程度、高いほど強い風が得られる
  • 構造:円筒形鋼管構造が主流
  • 材質:高張力鋼、耐候性鋼を使用
  • 内部設備:昇降設備、ケーブル配線
  • 避雷設備:落雷対策として避雷針を設置
  • 振動対策:風による振動を抑制する設計
基礎 タワーを地面に固定する構造物
  • 陸上基礎:重力式基礎(コンクリート塊)が主流
  • 洋上基礎:着床式(モノパイル、重力式、ジャケット式)
  • 浮体式:深海用、セミサブ型、スパー型
  • 地盤調査:基礎設計前の詳細な地盤調査が必要
  • アンカーボルト:タワーと基礎を強固に接続
  • 排水設備:基礎周辺の雨水排水対策
電気設備 発電した電力を系統に送電
  • パワーコンディショナ:交流の周波数・電圧調整
  • 保護装置:過電流、地絡、欠相保護
  • 系統連系装置:電力系統との同期・解列制御
  • 計測装置:発電量、風速、風向の監視
  • 通信設備:遠隔監視制御システム
制御システム 風車全体の運転制御
  • 風向風速計:風況データの測定
  • SCADA:監視制御・データ収集システム
  • 自動制御:起動・停止・出力制御
  • 安全装置:異常時の自動停止機能
  • 遠隔監視:運転状況の24時間監視

陸上風力発電の実例

大規模風力発電所の例

青山高原風力発電所(三重県):

  • 設備容量:80MW(2MW × 40基)
  • 年間発電量:約1.6億kWh
  • 一般家庭約4.4万世帯分の電力供給
  • 年間CO₂削減量:約8万トン

洋上風力発電の特徴

洋上風力発電所
イメージ図: 洋上風力発電所

洋上風力は陸上に比べて以下の利点があります:

  • 風況:海上は風が強く安定している
  • 大型化:輸送制約が少なく大型機設置可能
  • 騒音:住宅地から離れているため騒音問題が少ない
  • 景観:陸上の景観への影響が軽微
洋上風力の技術的課題
  • 塩害対策:海塩による腐食防止
  • 基礎工事:海底地盤への固定技術
  • 送電:海底ケーブルによる陸上への送電
  • 保守:海上での点検・修理作業

4.2 太陽光発電の実際の設備と応用

太陽光発電システムの構成

主要構成機器(詳細)
構成機器 基本機能 詳細・特徴
太陽電池モジュール 太陽光を直流電力に変換
  • 太陽電池セル:シリコン系(単結晶、多結晶、薄膜)が主流
  • フレーム:アルミ製、強度と軽量化を両立
  • ガラス:強化ガラスで表面保護、透過率95%以上
  • 封止材:EVA樹脂でセルを保護
  • バックシート:裏面保護、絶縁性・耐候性
  • ジャンクションボックス:配線接続、バイパスダイオード内蔵
  • 出力特性:温度上昇で出力低下(約-0.4%/℃)
パワーコンディショナ(PCS) 直流を交流に変換
  • DC-AC変換:インバータ回路による電力変換
  • MPPT制御:最大電力点追従制御で効率最大化
  • 系統連系保護:単独運転防止、電圧・周波数監視
  • 高調波抑制:THD5%以下に制御
  • 絶縁変圧器:系統との絶縁、昇圧機能
  • 冷却方式:自然空冷または強制空冷
  • 効率:95%以上の高効率
接続箱 複数のモジュールを接続
  • ストリング接続:複数モジュールの直列接続
  • ヒューズ:逆流電流保護、短絡保護
  • 避雷器:雷サージ保護
  • 開閉器:保守時の安全確保
  • 配線用遮断器:過電流保護
  • 絶縁監視:対地絶縁抵抗の監視
  • 防塵防水:IP65以上の保護等級
監視装置 発電状況の監視・制御
  • 発電量監視:リアルタイム発電量測定
  • 気象観測:日射計、温度計、風速計
  • 異常検知:機器故障、性能低下の早期発見
  • データロガー:運転データの蓄積・解析
  • 遠隔監視:インターネット経由での監視
  • アラーム機能:異常発生時の自動通報
  • パフォーマンス解析:発電効率の評価
系統連系装置 電力系統との接続
  • 連系用変圧器:発電電圧から系統電圧への変換
  • 保護リレー:過電圧・不足電圧・周波数異常検出
  • 計量装置:売電・買電電力量の計測
  • 開閉装置:系統との接続・解列
  • 力率改善装置:無効電力補償
  • 高調波フィルタ:高調波電流の抑制
  • 接地装置:安全確保のための接地系統
架台・設置構造 モジュールの設置・支持
  • 架台材質:アルミ合金または溶融亜鉛めっき鋼
  • 設置角度:最適傾斜角(緯度±10°程度)
  • 方位角:真南向き(±30°以内)が最適
  • 基礎工事:コンクリート基礎、杭基礎
  • 風圧荷重:風速40-60m/s対応設計
  • 積雪荷重:地域の積雪量に応じた設計
  • 排水対策:雨水の適切な排水設計

住宅用太陽光発電の実例

一般的な住宅用システム
家庭用 太陽光発電
イメージ図: 家庭用 太陽光発電
  • 設備容量:3~5kW(屋根面積約20~30m²)
  • 年間発電量:3,000~5,000kWh
  • 初期投資:100~150万円
  • 投資回収期間:約10~15年
  • CO₂削減効果:年間約1.5~2.5トン

メガソーラーの実例

大規模太陽光発電所の例

扇島太陽光発電所(神奈川県川崎市):

  • 設備容量:13.4MW
  • 設置面積:約11ha
  • 年間発電量:約1,400万kWh
  • 供給世帯数:約3,900世帯分
  • 特徴:埋立地の有効活用

農業との組み合わせ(ソーラーシェアリング)

農地の上部空間に太陽光発電設備を設置し、農業と発電を両立させる技術です。

  • 遮光率:通常30%以下に設定
  • 適用作物:葉物野菜、茶、ブルーベリー等
  • 効果:農業収入の安定化、高温対策

4.3 バイオマス発電の実際の設備

木質バイオマス発電

木材や木質廃材を燃料とする発電方式で、最も普及しているバイオマス発電です。

木質バイオマス発電所の例

苫小牧バイオマス発電所(北海道):

  • 発電出力:74.95MW
  • 燃料:国産材、輸入材、建設廃木材
  • 年間燃料使用量:約60万トン
  • 年間発電量:約5億kWh
  • 供給世帯数:約14万世帯分

メタン発酵発電

有機性廃棄物をメタン発酵させて得られるバイオガスによる発電です。

メタン発酵プロセス
  1. 前処理:有機性廃棄物の破砕・調整
  2. メタン発酵:嫌気性条件下での発酵
  3. ガス精製:バイオガスの硫化水素除去等
  4. 発電:ガスエンジンによる発電
  5. 消化液処理:発酵残渣の処理・活用

農業系バイオマスの活用

  • 稲わら・もみ殻:米の生産過程で発生する廃棄物
  • 畜産廃棄物:牛・豚・鳥の糞尿
  • 食品廃棄物:食品工場からの有機性廃棄物
  • 下水汚泥:下水処理場で発生する汚泥

4.4 地熱発電の実際の設備

地熱発電の方式

発電方式の分類
  • フラッシュサイクル:地熱流体を減圧して蒸気を発生
    • シングルフラッシュ:1段階の減圧
    • ダブルフラッシュ:2段階の減圧で効率向上
  • バイナリーサイクル:低沸点作動流体を使用
    • 比較的低温の地熱源でも発電可能
    • 地熱流体を直接タービンに送らない

日本の地熱発電所の実例

八丁原地熱発電所(大分県)
  • 発電出力:112MW(日本最大)
  • 発電方式:ダブルフラッシュサイクル
  • 年間発電量:約8億kWh
  • 設備利用率:約80%(高い安定性)
  • 運転開始:1977年

小規模地熱発電(バイナリー発電)

温泉地等での小規模な地熱利用として注目されています。

  • 温度範囲:80~150℃程度
  • 出力規模:数十kW~数MW
  • 利点:既存温泉への影響が少ない
  • 課題:初期投資コストの高さ

4.5 燃料電池の実際の応用

燃料電池の種類と特徴

🔋 固体高分子形(PEFC/PEMFC)

基本仕様

  • 動作温度:60~80℃
  • 用途:家庭用、自動車用
  • 特徴:常温起動、小型軽量

詳細技術仕様

  • 電解質:フッ素系イオン交換膜(ナフィオン等)
  • 触媒:白金系触媒(高価だが高活性)
  • 燃料:純水素(CO濃度10ppm以下)
  • 起動時間:数秒~数分で起動可能
  • 発電効率:35~40%(HHV基準)
  • 寿命:家庭用4~6万時間、自動車用5000時間
  • 出力密度:0.5~1.0 W/cm²
  • 応用例:エネファーム、燃料電池自動車(FCV)
🔥 溶融炭酸塩形(MCFC)

基本仕様

  • 動作温度:約650℃
  • 用途:定置用発電
  • 特徴:高効率、排熱利用可能

詳細技術仕様

  • 電解質:溶融炭酸塩(Li₂CO₃-K₂CO₃)
  • 触媒:ニッケル系触媒(白金不要で低コスト)
  • 燃料:水素、天然ガス、メタノール等
  • 起動時間:数時間(予熱が必要)
  • 発電効率:45~50%(LHV基準)
  • 総合効率:80%以上(コージェネレーション)
  • 出力規模:100kW~数MW
  • 寿命:約4万時間
  • CO₂分離:内部でCO₂を分離・回収可能
⚡ 固体酸化物形(SOFC)

基本仕様

  • 動作温度:700~1000℃
  • 用途:定置用発電
  • 特徴:最高効率、多様な燃料対応

詳細技術仕様

  • 電解質:固体酸化物(イットリア安定化ジルコニア等)
  • 触媒:ニッケル・セラミック複合材料
  • 燃料:水素、天然ガス、バイオガス、アンモニア
  • 起動時間:数時間~十数時間
  • 発電効率:50~60%(LHV基準)
  • 総合効率:85%以上(高温排熱利用)
  • 出力規模:1kW~数十MW
  • 燃料多様性:炭化水素系燃料を直接利用可能
  • 逆反応:水電解による水素製造も可能
🧪 アルカリ形(AFC)

基本仕様

  • 動作温度:60~90℃
  • 用途:宇宙用、特殊用途
  • 特徴:高効率、純水素・酸素専用

詳細技術仕様

  • 電解質:水酸化カリウム(KOH)水溶液
  • 触媒:ニッケル、銀系(白金不要)
  • 燃料:純水素(CO₂、COに弱い)
  • 発電効率:60%以上
  • 特殊用途:宇宙船、潜水艦
  • CO₂感受性:大気中のCO₂で性能劣化
  • 電解質管理:濃度・温度管理が重要
⚗️ リン酸形(PAFC)

基本仕様

  • 動作温度:150~220℃
  • 用途:業務用発電
  • 特徴:技術成熟、実用化済み

詳細技術仕様

  • 電解質:濃リン酸水溶液
  • 触媒:白金系触媒
  • 燃料:水素、改質ガス
  • 発電効率:35~40%
  • CO耐性:1~2%程度のCOに耐性
  • 実用化:1980年代から商用化
  • 用途:病院、ホテル等の分散電源
  • 排熱利用:150℃の温水供給可能
📚 試験での重要ポイント
  • 動作温度の違い:PEFC(低温)→ PAFC(中温)→ MCFC・SOFC(高温)
  • 用途の使い分け:PEFC(移動用)、MCFC・SOFC(定置用)
  • 効率の順序:SOFC > MCFC > PAFC ≈ PEFC
  • 起動性:PEFC(高速起動)、高温型(起動に時間要)
  • 燃料多様性:SOFC・MCFC(多様な燃料対応)
  • 触媒コスト:PEFC・PAFC(白金使用)、その他(白金不要)
  • 実用化状況:PEFC・PAFC(実用化済み)、SOFC・MCFC(開発段階)

家庭用燃料電池(エネファーム)

エネファームの仕様例
  • 発電出力:0.7~1.0kW
  • 発電効率:37~39%
  • 総合効率:90%以上(排熱利用含む)
  • 燃料:都市ガス、LPガス
  • 年間発電量:約3,500~4,000kWh
  • 導入効果:年間CO₂削減量約1.5トン

燃料電池自動車(FCV)

水素を燃料とする次世代自動車として実用化が進んでいます。

  • 航続距離:400~650km程度
  • 水素充填時間:約3分
  • 排出物:水のみ(走行時ゼロエミッション)
  • 課題:水素ステーションのインフラ整備
大規模燃料電池発電所の例

韓国 富川燃料電池発電所:

  • 発電出力:約80MW
  • 燃料電池形式:溶融炭酸塩形(MCFC)
  • 発電効率:一般的に45~60%程度
  • 特徴:稼働開始時、単一の燃料電池発電所としては大規模な部類に入り、地域熱供給も行っています。

4.6 技術的課題と対策

共通の技術的課題

1. 出力変動対策

課題:太陽光・風力発電は気象条件により出力が変動

対策技術:

  • 蓄電池システム:リチウムイオン電池、NAS電池等
  • 揚水発電:大容量エネルギー貯蔵
  • 水素製造:余剰電力による水素生成
  • デマンドレスポンス:需要側の電力使用制御
2. 系統安定化技術

課題:大量導入時の電力系統への影響

対策技術:

  • スマートインバータ:系統支援機能付きインバータ
  • 仮想発電所(VPP):分散電源の統合制御
  • 慣性制御:同期発電機の慣性力補完
  • 周波数制御:自動周波数制御(AFC)
3. 経済性の向上
コスト削減への取り組み
  • 技術革新:効率向上、材料コスト削減
  • 大量生産:スケールメリットの活用
  • 競争入札:FIT制度から競争入札への移行
  • O&M最適化:運転保守コストの削減
  • 長寿命化:設備の耐用年数延長

将来技術への展望

  • ペロブスカイト太陽電池:低コスト・高効率の次世代太陽電池
  • 浮体式洋上風力:深海域での風力発電
  • 人工光合成:太陽光による直接水素製造
  • 次世代地熱:高温岩体発電(HDR)
  • バイオリファイナリー:バイオマスからの多様な製品製造

これらの技術開発により、再生可能エネルギーの更なる普及拡大と、持続可能な社会の実現が期待されています。

5. 演習問題

5.1 基本理解問題

問題1:再生可能エネルギーの基本特性

再生可能エネルギーの特徴として正しいものを次の中からすべて選びなさい。

  1. 資源が枯渇しない持続可能性を持つ
  2. CO₂排出量が化石燃料に比べて少ない
  3. 出力が気象条件に左右されず安定している
  4. エネルギー密度が化石燃料より高い
  5. 地域に分散して存在する

解答:a, b, e

解説:

  • a. 正解:再生可能エネルギーは自然のサイクルで補充されるため持続可能です。
  • b. 正解:発電時のCO₂排出量は化石燃料と比較して大幅に少なくなります。
  • c. 誤り:太陽光や風力などは気象条件により出力が変動します。これは再生可能エネルギーの課題の一つです。
  • d. 誤り:再生可能エネルギーは一般的にエネルギー密度が低く、希薄性が特徴です。
  • e. 正解:太陽光、風力、地熱など、地域に分散して存在することが特徴です。

問題2:風力発電の基本原理

風力発電に関する記述として正しいものはどれか。

  1. 風車の理論最大効率はベッツ限界により約59%に制限される
  2. 風の運動エネルギーは風速の2乗に比例する
  3. 風車の出力は受風面積に反比例する
  4. 洋上風力は陸上風力より風況が悪い

解答:a

解説:

  • a. 正解:ベッツの法則により、風車の理論最大効率は16/27 ≈ 59.3%に制限されます。
  • b. 誤り:風の運動エネルギーは風速の3乗に比例します。これが風力発電で風速が重要な理由です。
  • c. 誤り:風車の出力は受風面積に比例します。大型化により出力向上が図られています。
  • d. 誤り:洋上風力は陸上より風況が良好で、風速が高く安定しています。

問題3:太陽光発電の特性

太陽電池の特性パラメータに関する説明として適切でないものはどれか。

  1. 開放電圧(Voc)は光電流が零のときの端子電圧である
  2. 短絡電流(Isc)は端子電圧が零のときの電流である
  3. 充填因子(FF)は太陽電池の品質を表す指標である
  4. 変換効率は入射光パワーに対する最大出力の比で表される

解答:a

解説:

  • a. 誤り:開放電圧は電流が零(開放状態)のときの端子電圧です。光電流が零になることはありません。
  • b. 正解:短絡電流は端子を短絡(電圧零)したときに流れる電流で、光電流とほぼ等しくなります。
  • c. 正解:充填因子は太陽電池の出力特性の良さを表す重要な指標です。
  • d. 正解:変換効率は入射光パワーに対する最大出力パワーの比で定義されます。

問題4:燃料電池の基本

燃料電池に関する記述として正しいものはどれか。

  1. 水素と酸素の燃焼反応により電気エネルギーを得る
  2. 理論効率は熱機関の効率より低い
  3. 電気化学反応により直接電気エネルギーを取り出す
  4. 動作温度が高いほど効率が低下する

解答:c

解説:

  • a. 誤り:燃料電池は燃焼ではなく電気化学反応により発電します。
  • b. 誤り:燃料電池の理論効率は熱機関(カルノー効率)より高くなります。
  • c. 正解:燃料電池は化学エネルギーを電気化学反応により直接電気エネルギーに変換します。
  • d. 誤り:一般的に動作温度が高いほど電気化学反応が活発になり効率が向上します。

5.2 試験対策問題

問題5

分散型電源の系統連系に関する記述として、適切でないものはどれか。

  1. 分散型電源の導入により配電線の電圧上昇が生じる場合がある
  2. インバータを用いる分散型電源では高調波対策が重要である
  3. 系統事故時には分散型電源を速やかに解列する必要がある
  4. 分散型電源の出力変動は系統の周波数に影響を与えない

解答:d

解説:

  • a. 正解:分散型電源が配電線に逆潮流を起こすと、線路インピーダンスにより電圧上昇が生じます。
  • b. 正解:インバータのスイッチング動作により高調波が発生するため、フィルタ等の対策が必要です。
  • c. 正解:系統保護の観点から、事故時には分散型電源を系統から切り離す必要があります。
  • d. 誤り:分散型電源の出力変動、特に大量導入時には系統周波数に影響を与えるため、周波数制御が重要な課題となります。

問題6

再生可能エネルギーの特徴と課題に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 地熱発電は出力変動が大きく不安定な電源である
  2. バイオマス発電はカーボンニュートラルな電源とされている
  3. 風力発電の設備利用率は火力発電より高い
  4. 太陽光発電は夜間でも月光により少量の発電が可能である

解答:b

解説:

  • a. 誤り:地熱発電は地下の安定した熱源を利用するため、出力変動が少なく安定した電源です。
  • b. 正解:バイオマスは植物が成長時に吸収したCO₂と燃焼時に排出するCO₂が相殺されるため、カーボンニュートラルとされています。
  • c. 誤り:風力発電の設備利用率は通常20-30%程度で、火力発電(60-70%)より低くなります。
  • d. 誤り:月光では太陽光発電に必要な光量が得られないため、実用的な発電はできません。

問題7

燃料電池に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 固体高分子形燃料電池(PEFC)は高温で動作する
  2. 燃料電池の理論効率はカルノー効率の制約を受ける
  3. 燃料電池自動車の排気ガスには水蒸気が含まれる
  4. 燃料電池は蓄電池と同様にエネルギー貯蔵機能を持つ

解答:c

解説:

  • a. 誤り:PEFCは60-80℃程度の比較的低温で動作します。高温で動作するのはSOFCやMCFCです。
  • b. 誤り:燃料電池は電気化学反応により直接発電するため、熱機関のカルノー効率の制約を受けません。
  • c. 正解:燃料電池では水素と酸素の反応により水が生成されるため、排気には水蒸気が含まれます。
  • d. 誤り:燃料電池は発電装置であり、エネルギー貯蔵機能はありません。蓄電池とは原理が異なります。

問題8

太陽光発電システムの系統連系に関する記述として、適切でないものはどれか。

  1. パワーコンディショナにより直流を交流に変換して系統に接続する
  2. 系統電圧や周波数の異常時には自動的に解列する保護機能が必要である
  3. 逆潮流により配電線の電圧が上昇する可能性がある
  4. 天候による出力変動を抑制するため蓄電池の設置が法的に義務付けられている

解答:d

解説:

  • a. 正解:太陽電池で発電した直流電力をパワーコンディショナ(インバータ)で交流に変換して系統連系します。
  • b. 正解:系統保護のため、電圧・周波数異常時の自動解列機能は系統連系の必須要件です。
  • c. 正解:太陽光発電の逆潮流により配電線に電圧上昇が生じることがあり、対策が必要です。
  • d. 誤り:現在、太陽光発電システムに蓄電池設置の法的義務はありません。出力変動対策は系統全体で行われています。

問題9

再生可能エネルギーの大量導入が電力系統に与える影響と対策に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 再生可能エネルギーの導入により系統の慣性が増加し安定性が向上する
  2. 出力予測技術の向上により需給運用計画の精度が向上する
  3. 分散型電源の増加により送電損失が増加する
  4. 再生可能エネルギーは調整力を持たないため系統運用に影響しない

解答:b

解説:

  • a. 誤り:インバータ接続の再生可能エネルギーは回転慣性を持たないため、系統の慣性が減少し安定性に課題が生じます。
  • b. 正解:気象予報技術の向上により太陽光・風力発電の出力予測精度が向上し、需給運用計画の精度向上に寄与しています。
  • c. 誤り:分散型電源は需要地近くに設置されるため、送電距離が短くなり送電損失は減少します。
  • d. 誤り:再生可能エネルギーの出力変動は系統運用に大きな影響を与えるため、調整力の確保が重要な課題です。

問題10

エネルギー貯蔵技術と再生可能エネルギーの組み合わせに関する記述として、適切でないものはどれか。

  1. 蓄電池により太陽光発電の夜間電力供給が可能になる
  2. 揚水発電は大容量の電力貯蔵手段として活用される
  3. 余剰電力による水素製造は長期間のエネルギー貯蔵手段となる
  4. 蓄電池の設置により再生可能エネルギーの出力変動が完全に解消される

解答:d

解説:

  • a. 正解:蓄電池により昼間の太陽光発電電力を貯蔵し、夜間に放電することで24時間の電力供給が可能になります。
  • b. 正解:揚水発電は大容量(数百MW~GW級)の電力貯蔵が可能で、系統全体の調整力として重要な役割を果たします。
  • c. 正解:余剰電力で水を電気分解して水素を製造し、長期間貯蔵することで季節間の電力需給調整が可能になります。
  • d. 誤り:蓄電池の容量や充放電能力には限界があるため、出力変動を完全に解消することはできません。適切な容量設計と制御が必要です。

演習問題の学習ポイント:

  • 基本原理の理解:各再生可能エネルギーの発電原理を物理的に理解する
  • 系統連系技術:電力系統との接続時の技術的課題と対策を把握する
  • 出力特性:各電源の出力変動特性と系統への影響を理解する
  • 経済性・環境性:再生可能エネルギーの社会的意義を理解する
  • 最新動向:技術開発動向と政策動向を常に把握する

6. まとめ

6.1 重要ポイントの要約

各再生可能エネルギーの特徴

風力発電
  • 発電の仕組み:風の力で大きな風車を回して電気を作る
  • 風速との関係:風の速さが2倍になると、発電量は8倍になる(風速がとても重要)
  • 効率の限界:理論上、風のエネルギーの約60%までしか電気に変換できない
  • 設置場所:陸上より海上の方が強い風が安定して吹くため有利
  • 主な問題:風が弱いと発電できない、風車の音、景色への影響
太陽光発電
  • 発電の仕組み:太陽の光が太陽電池パネルに当たると直接電気が発生する
  • 重要な性能:どれだけ電気を作れるか(変換効率)、最大でどれだけの電気が作れるか
  • 良い点:故障が少なく手入れが簡単、屋根や空き地など色々な場所に設置できる
  • 主な問題:曇りや雨の日は発電量が減る、夜は全く発電できない
地熱発電
  • 発電の仕組み:地熱・蒸気を使ってタービンを回して電気を作る
  • 発電方式:地下の蒸気を直接使う方法と、特別な液体を温めて蒸気を作る方法がある
  • 良い点:天候に関係なく24時間安定して発電できる、稼働率が80%以上と高い
  • 主な問題:火山地帯など限られた場所にしか作れない、初期費用が高い、温泉への影響
バイオマス発電
  • 発電の仕組み:木材、農業廃棄物、家畜の糞などを燃やしたり発酵させたりして電気を作る
  • 燃料の種類:木くず、稲わら、生ごみ、牛や豚の糞尿など
  • 良い点:CO₂を増やさない(植物が吸ったCO₂と燃やして出すCO₂が同じ)、廃棄物を有効活用
  • 主な問題:燃料を安定して集めるのが大変、運搬にお金がかかる
燃料電池
  • 発電の仕組み:水素と酸素を化学反応させて直接電気を作る(燃やさない)
  • 化学反応:水素+酸素→水+電気(出るのは水だけで有害物質は出ない)
  • 種類:家庭用(エネファーム)、自動車用、大型発電所用など用途によって違う
  • 良い点:発電効率が高い、排出されるのは水だけでとてもクリーン
  • 主な問題:水素ステーションなどインフラ整備、設備費用が高い

系統連系の重要ポイント

系統連系技術の要点(詳細解説)
1. 電力品質の維持

電圧・周波数の維持:

  • 電圧制御:分散型電源の逆潮流により配電線電圧が上昇する問題
    • 対策:SVR(自動電圧調整器)、LRT(負荷時タップ切換変圧器)→電圧を自動で適正値に保つ装置
    • インバータの無効電力制御による電圧調整→発電設備側で電圧を調整する技術
    ※逆潮流とは:通常は発電所から家庭へ電気が流れるが、太陽光発電などで家庭から電力系統へ電気が逆向きに流れること
  • 周波数制御:大量の再生可能エネルギー導入時の周波数変動
    • 慣性力の不足による周波数変動の拡大→従来の発電機が持つ「電気の安定性を保つ力」が不足
    • 仮想慣性制御(Virtual Inertia)技術の導入→コンピュータ制御で従来発電機の安定化機能を模擬
    ※周波数とは:電気の品質を表す指標。日本では50Hz/60Hzに保つ必要がある

高調波対策:

  • 発生原因:インバータのスイッチング動作
    • PWM制御による高調波の発生→直流を交流に変換する際の電子スイッチの高速切り替えで発生
    • 電圧・電流波形の歪み→本来きれいな正弦波であるべき電気が歪んでしまう現象
  • 対策技術:
    • アクティブフィルタによる高調波補償→高調波を打ち消す信号を作って電気をきれいにする装置
    • LC フィルタによる高調波除去→コイルとコンデンサで高調波をカットするフィルター
    • 高調波抑制機能付きインバータの使用→最初から高調波を出さないように改良された変換器
    ※高調波とは:基本周波数の整数倍の不要な周波数成分で、電気機器の誤動作や発熱の原因となる
2. 保護協調システム

事故時の適切な解列動作:

  • 単独運転防止:
    • 系統停電時に分散型電源が単独で運転を続ける現象の防止→停電時も太陽光発電などが動き続けると危険
    • 作業員の安全確保と機器保護が目的→感電事故防止と設備故障防止のため
    • 検出方法:受動的方式(電圧・周波数監視)、能動的方式(信号注入)→停電を検知する2つの方法
    ※単独運転とは:系統から切り離されても発電設備だけで運転を続けてしまう危険な状態
  • 系統保護リレー:
    • 過電圧・不足電圧リレー(OVR/UVR)→電圧が高すぎ・低すぎの時に自動で切断
    • 過周波数・不足周波数リレー(OFR/UFR)→周波数異常時に自動で切断
    • 方向性過電流リレー(67)→電流の向きと大きさを監視して事故を検出
  • 再閉路との協調:
    • 一時的故障時の自動復旧機能→雷などの一時的な事故後に自動で電気を復旧
    • 分散型電源の解列タイミング調整→復旧作業に影響しないよう発電設備を適切に切り離し
3. 出力変動対策技術

予測技術:

  • 気象予測:日射量・風速の短期~中期予測
    • 数値気象予報(NWP)の活用→コンピュータによる詳細な天気予報で発電量を予測
    • 機械学習による予測精度向上→AIを使ってより正確な発電量予測を実現
  • 発電量予測:翌日・当日の発電量予測
    • 需給運用計画への反映→明日どれくらい発電するかを事前に計画に組み込み
    • 調整力の事前確保→不足分を補うバックアップ電源を事前に準備

蓄電技術:

  • 短期変動対策:
    • リチウムイオン電池による秒~分単位の変動緩和→雲で太陽が隠れた時など短時間の変動を蓄電池で補う
    • フライホイール蓄電システム→回転する重いディスクでエネルギーを蓄える高速応答システム
  • 長期変動対策:
    • 揚水発電による時間単位の調整→余った電気で水をくみ上げ、必要な時に発電する大容量蓄電
    • Power-to-Gas技術(余剰電力による水素製造)→余った電気で水素を作り、長期間保存できる燃料にする

需給調整:

  • 供給側調整:
    • 火力発電の調整運転→再生可能エネルギーの変動に合わせて火力発電の出力を増減
    • 再生可能エネルギーの出力制御→電気が余った時に太陽光発電などの出力を一時的に抑制
  • 需要側調整:
    • デマンドレスポンス(DR)→電気が不足した時に工場などが電気使用量を減らして協力
    • ネガワット取引→電気を節約した分を「発電したのと同じ」として取引する仕組み
※需給調整とは:電気の作る量(供給)と使う量(需要)のバランスを常に保つこと
4. 慣性制御技術

系統安定度の維持:

  • 慣性力の減少問題:
    • 従来の同期発電機は回転体として慣性力を提供→重い発電機が回転することで電気の安定性を保つ「重り」の役割
    • インバータ接続電源は慣性力を持たない→太陽光発電などは電子回路なので物理的な「重り」がない
    • 周波数変動に対する系統の安定性低下→急な変化に対して電気系統が不安定になりやすい
    ※慣性力とは:急な変化に対してゆっくりと変化する性質。自転車が倒れにくいのと同じ原理
  • 仮想慣性制御(Virtual Inertia):
    • インバータの制御により慣性力を模擬→コンピュータ制御で従来発電機の「重り効果」を人工的に再現
    • 周波数変化率に応じた瞬時的な出力調整→周波数が急変した瞬間に自動で出力を調整して安定化
    • 系統周波数の安定化に寄与→電気の品質を安定に保つ効果
  • 同期化力の確保:
    • Grid Forming インバータ技術→電力系統の基準となる電圧・周波数を自分で作り出す高度なインバータ
    • 系統電圧・周波数の基準を自律的に形成→他に頼らず自分で電気の品質基準を作って維持
5. 分散制御システム

多数の小規模電源の統合管理:

  • VPP(Virtual Power Plant):
    • 分散型電源を束ねて一つの発電所として制御→家庭の太陽光発電などをまとめて大きな発電所のように運用
    • IoT技術による遠隔監視・制御→インターネットで各家庭の発電状況を監視・制御
    • アグリゲータによる統合管理→多数の小規模電源をまとめて管理する専門事業者
    ※VPPとは:バーチャル発電所。物理的には分散している発電設備を仮想的に一つの発電所として扱う概念
  • マイクログリッド:
    • 地域単位での電力系統の独立運用→町や工場単位で独自の小さな電力ネットワークを構築
    • 平常時:系統連系、緊急時:独立運転→普段は大きな電力網とつながり、災害時は独立して電気を供給
    • エネルギーマネジメントシステム(EMS)による最適制御→コンピュータが最も効率的な運転方法を自動で判断
  • スマートインバータ:
    • 系統支援機能を持つ高機能インバータ→単なる電力変換だけでなく電力系統を支援する多機能な装置
    • 電圧調整、周波数調整機能→電気の品質を自動で調整して系統を安定化
    • 通信機能による遠隔制御対応→インターネット経由で遠隔から制御・監視が可能
試験でのポイント

第三種電気主任技術者試験での重要事項:

  • 系統連系の基本要件:電圧、周波数、保護機能の理解→発電設備を電力系統に安全に接続するための基本条件
  • 単独運転防止:検出方法と対策の理解→停電時に発電設備が危険な単独運転をしないための仕組み
  • 電圧上昇問題:逆潮流による影響と対策→太陽光発電などが電気を送り返すことで起こる電圧問題
  • 高調波対策:発生原因と抑制方法→インバータが出す電気の歪みを防ぐ技術
  • 出力変動の影響:系統運用への影響と対策技術→天候で発電量が変わることの影響と対策
  • 系統保護:保護リレーの種類と動作原理→事故時に電気設備を自動で保護する装置の種類と働き
※これらの内容は電力科目で文章問題として出題される傾向があります

6.2 次の学習単元への橋渡し

関連する学習分野

再生可能エネルギーの学習を深めるために、以下の関連分野も併せて学習することを推奨します:

1. 電力系統工学
  • 系統運用:需給バランス、周波数制御、電圧制御
  • 系統保護:保護リレー、事故除去
  • 系統計画:電源開発、送配電設備計画
  • 電力品質:高調波、電圧変動、フリッカ
2. パワーエレクトロニクス
  • インバータ技術:PWM制御、MPPT制御
  • 電力変換:DC-DCコンバータ、AC-DCコンバータ
  • 制御技術:系統同期、無効電力制御
  • 半導体素子:IGBT、SiC、GaN
3. 蓄電技術
  • 蓄電池:リチウムイオン、NAS電池、全固体電池
  • 揚水発電:大容量エネルギー貯蔵
  • 水素技術:水電解、燃料電池、水素貯蔵
  • その他:圧縮空気、フライホイール
4. スマートグリッド技術
  • 通信技術:双方向通信、IoT、スマートメーター
  • 制御技術:分散制御、最適化制御
  • 需要制御:デマンドレスポンス、ディマンドコントロール
  • エネルギーマネジメント:HEMS、BEMS、CEMS

継続学習のための推奨事項

技術動向の把握
  • 技術文献:電気学会、エネルギー・資源学会等の論文
  • 業界動向:NEDO、経済産業省の報告書
  • 国際動向:IRENA、IEAの統計・予測
  • 標準化:JIS、IEC等の規格動向
実務経験の積み重ね
  • 現場見学:再生可能エネルギー発電所の見学
  • 設計演習:システム設計の実践
  • 計測実習:発電特性の測定・解析
  • 運用体験:系統運用シミュレーション

社会的視点での理解

技術的な理解に加えて、再生可能エネルギーを社会システムとして捉える視点も重要です:

  • エネルギー政策:国のエネルギー基本計画、地域エネルギー計画
  • 経済性評価:LCOE、投資回収、炭素価格
  • 環境評価:LCA、生物多様性への影響
  • 社会受容性:住民合意、景観問題、リスクコミュニケーション

将来展望

再生可能エネルギー分野は急速に発展しており、以下の技術革新が期待されています:

次世代技術
  • 高効率太陽電池:ペロブスカイト、タンデム構造
  • 浮体式洋上風力:深海域での大規模開発
  • 人工光合成:太陽光による直接水素製造
  • 次世代地熱:高温岩体、超臨界地熱
  • バイオリファイナリー:総合的なバイオマス利用
  • Power-to-X:電力から燃料・化学品製造

これらの技術動向を継続的に学習し、持続可能な社会の実現に向けた電気主任技術者としての専門性を高めていくことが重要です。

継続的な学習により、再生可能エネルギー分野の専門家として活躍できる知識と技能を身につけていきましょう。